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2008年11月25日

2008年11月25日 (火)

八幡沼開鑿と川端宇兵衛翁。20081125。

2008/11/25

八幡沼開鑿と川端宇兵衛翁

華蔵寺公園の北東県道462の東側に八幡沼(新沼)がある。沼の南岸にこの沼の由来を刻んだかなり大きな石碑が建っている。八幡沼の開鑿開始から51年後の大正2年に建立された「八幡沼の碑」がそれである。八幡沼は粕川から取水した灌漑用水を貯水する人工沼であり、まさに一銭たりとも出費をしたくない文久二年の大旱魃の年に、村民の心の拠り所である八幡宮、村社大明神さえも潰して、農民125名が大刑覚悟のうえ連印して藩主に陳情し、発起人・世話人等は総額500両以上の資金を投じ、3年間の期間をかけてこの大工事をやりとげた事が記録に残っている。

大工事を先頭に立ってやり遂げたのが川端宇兵衛翁であった。奇しくも川端宇兵衛は国定忠次の隣村で同じような境遇に生まれ同じような事をして同じ時代を生きていた。国定忠次より1年先輩であったが、国定忠次が大戸の関で磔で処刑されて12年後即ち忠次の13回忌の文久2年(1862)に八幡沼の開鑿を始めたのである。

村民の藩主への陳情が藩主のお気に召さなければ、打ち首等の極刑を賜う事もあり得た時代の決断であったのだ。来年の2009年が川端宇兵衛生誕200年になる。三軒屋遺跡は千数百年前も稲作が地域の重要な産業であった事を示している。八幡沼の開鑿は水利基盤の創設、維持、改良が絶え間なく続けられていた事を証明している。川端宇兵衛誕生200年を機会に地域の歴史と先人達の偉業を振り返るのも意義有ることであろう。

以下に元殖蓮公民館館長川端門太郎先生が「うえはす史談 第二号」に紹介した碑文を現代語に意訳したものを掲載する。

以下碑文:
**************************************
上植木の郷(さと)は素(もと)から水利に乏しく灌漑に不便な地域であった。旱魃に遭遇すれば稲田の苗は枯死して、飢えて青菜のように血色がわるくなるような苦境に陥ることが屡々(しばしば)あった。従って、昔から志のある者は心身を粉にして種々救済策の考案に努めたが、それが実現する時期が到来せず一人として成功する者はいなかった。

ところが、そんな時、村に川端宇兵衛翁という者がいた。人柄は気宇壮大・気性が強く衆にすぐれており細事を気にすることもなく、いつもこう言っていた、

「男子に生まれ芳名(名声)を百世に流すことができないようでは、まさに臭名(汚名)を万年に残して当然なのだ(男子生まれて芳(かんばし)を百世に流す能(あたわ)わずずんば、またまさに臭を万年に遺(のこす)すべきなり)」

どうして小石のようにごろごろとして平凡でツバメやスズメのようなものの尻につき従おか。まさにあの鯤(こん)という魚が翼長3千里の鵬(ほう)という大鳥になって9万里の高空を飛ぶように人間界の鵬になるべきなのだ(あに碌々として燕雀と相(あい)随(したがわん)や。よろしく化して鵬となるべし)

毀誉褒貶は自分には無関係である。何事も公平無私を第一とするならば成功しないことがあろうか。特に役に立つ事業を興し大衆の福利をもたらそうとするならば自然の摂理を利用するにこしたことはない。

郷里の農民は水利に苦しんでいるときであり将に新沼を開鑿(かいさく)して灌漑のために活用すべきであると決意し密かにこの土木工事の設計をして、地盤を調査し水路を通すため自ら技師となってこれを測量し同じ考えの人々を求めて土木工事への賛同を頼んだ。

文久二壬戌(みずのえいぬ)年三月藩主に請願書を添えて工事の許可を願い出た。かくて、事前に調査した土地、小字(こあざ)関組の七本杉の大木を皆伐採して、八幡社境内とその他の山林八千五百六十五坪を開鑿し隧道を掘って粕川の水を引き込むという困難な工事を思い起こすべきである。

同年十月十九日天地が和合する吉日を選んで鍬入れ式を挙行し工事を開始した。翁自ら鍬を取りこの役を勤めた。村の役人や役員等数十人がこれに連なった。元治元年甲子十二月に工事が落成した。此の間の三年間雨に打たれ風にさらされ寝食を忘れ日々この大工事に従事する事一日の如しであり実によく勤めたものだと言うべきである。

ああ、これは村が豊に繁栄する基礎であって、それのみでない(已と己の相違:すでは意味が通じない:おのれにとる)。更にその他百数町歩の及ぼす其の恩恵たるや実に偉大である。すなわち農家はこの事業によって灌漑しまさに旱魃の被害を免れることが可能になる。

伊勢崎藩主の酒井侯はこの業績を賞して帯刀と名字を許された者は数十人にのぼる。本年有志の人々が相談して碑を建て永く翁の功労に感謝しその大きな恩恵を心に刻みつけるために其の事跡を石に書き込むことを要請された。当職は文につたなく翁の偉功の万分の一すらもしるすことができない。よって、詩を作り以て後世に伝えたい。

其の辞に曰く、

赤城之水流成粕川   赤城の水は流れて粕川となる
鑿沼而蓄百姓頼全   沼を穿ちて百姓頼全を蓄える
父老感涙稲苗色鮮   父老感涙して稲苗色あざやかなり
数邑抃舞将漑民田   数邑抃舞(べんぶ)す将に民田漑(みち)たり
宇兵衛翁徳後子孫傳  宇兵衛翁の徳後の子孫に傳う

大正二年十月吉日

正五位 子爵 酒井忠一 篆額 

丘林山    瑞庵祐願 謹撰 併書

       井上澹泉 刻
**************************************
:以上碑文。
注記:酒井 忠彰(さかい ただあきら)は、江戸時代の大名。上野伊勢崎藩の第9代(最後)の藩主。酒井忠一は忠彰の次男。丘林山は伊勢崎の名刹華蔵寺の山号。

八幡沼の完成が元治 元年 (西暦1864 年)であり、2014年に開鑿150年を迎える。

明治 元年 (西暦1868年)の4年前である。

************************
追記(2023/06/10):タイトルの後に投稿期日を追加。本日ランキング4位。読者に感謝。

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