2009/5/6
テレビ用ICの拡販
自分が入社した前後は集積回路が民生用に使い始められる頃であった。まだ、手探りの部
分が多かった。初代のVIF-ICは上司が設計開発したオリジナル製品であった。この上司から
はAGC方式とかバンドパスフィルター、トラップ等を教えた頂いた。代二世代は米国製品の
互換品であった。ブロック毎に数種類の互換品が開発された。カラーテレビの普及が進むに
伴って生産量も増大した。日本の集積回路は最初は主に社内製品に使うために開発され
た。VIF-ICはカラーテレビセットを買う顧客から見ればその存在に気付かれない程優れてい
るという奇妙な性質がある。要するに高周波の信号を安定に忠実に増幅するという事が使命
である。そういうICがあると気づかれては性能が劣る証明になる。テレビ信号を色々加工す
るICはテレビの好みやメーカーの画像作りに関係する。他社に供給するには抵抗がある。従
って競合他社にテレビ用集積回路を販売するとなるとVIF-ICは拡販の候補にしやすい。第三
世代は信号の復調機能まで含めたオリジナル製品であった。自社のテレビセットに導入が終
わるとテレビメーカーへ拡販を始めた。この製品に合わせてSAWフィルターも実用化され
た。数個のバンドパスフィルター、トラップ等調整が必要な部品を一つの固体部品に置き換え
る事ができて、調整工程の合理化も達成した。北陸地方のテレビメーカーに、近くに出来た
ばかりの代理店の営業所員と拡販に通った事を思い出す。拡販競争はライバル製品とデッ
ドヒートの状態であった。結局自分の担当の時代は拡販で涙を飲む結果になった。会社の運
命を背負っている主力製品に使う部品は単に性能や価格だけで採用が決まる物ではない。
サポート、デリバリー、クレーム対応等々の実績も判断の対象になるのだ。第四世代以降は
このメーカーとの関係は深まっているようであった。当時の評価の担当者が技術部門の役職
者になっていて恐縮した。