技術断想:米運輸省によるトヨタ車急加速問題の調査結果

2011/2/12
昨日は朝から雪だったが、昼間は積もらなかった。昨夕から今朝に掛けては気温も下がり、朝はまた雪景色となっていた。

昨日の天気、

TAVE= 1.2
TMAX= 3.6
TMIN= 0.4
DIFF= 3.2
WMAX= 4
SUNS= 0
RAIN= 5.5

以下本題。

技術断想:米運輸省によるトヨタ車急加速問題の調査結果

10日の上毛新聞の5面に「トヨタ電子制御 欠陥なし」と大見出しで報じられた。NET検索すると、「【ワシントン、ニューヨーク共同】米運輸省は8日、トヨタ自動車の大規模リコール(無料の回収・修理)に発展した急加速問題について最終調査報告書を発表し「電子制御システムに急加速の原因となる欠陥はなかった」と結論づけた。電子系統の欠陥を一貫して否定してきたトヨタ側の主張をほぼ全面的に認めた。」(2011/02/09 09:57   【共同通信】)とあった。

そこで、関心があったのが、調査の担当と調査の内容。記事には、「今回の調査は2003年の米スペースシャトル「コロンビア」の空中分解事故を機に設立されたNASA工学安全センターが担当。急加速の報告があった車9台を調査し、28万行以上のプログラムを分析した。」とあった。米運輸省としては、最も信頼できる機関に客観的な調査を依頼して、調査結果の信頼を高めることに配慮した処置ではないかと思った。

そこで、念のため米運輸省(U.S. Department of Transportation )のホームページ(http://www.dot.gov/)にアクセスしてみると、該当した情報が開示されていた。その情報の質量には圧倒された。「28万行以上のプログラムを分析した。」という情報がどこにあるかは分からなかったが、制御システム、ハードウウェア、ソフトウウェアからクレームの発生頻度の時系列調査というような疫学的なデータまで分析され、報告書となって公開されていた。

NASA工学安全センターの論理的な手法は「急加速というクレームのあったトヨタ車にはそれを起こした原因がある」という仮説を立て、可能な原因を一つ一つ検証するという基本的な手法である。その検証の結果、該当するクレームのあったトヨタ車には、制御システム、ハードウウェア、ソフトウウェア等検証した範囲では急発進を引き起こす要因は見つからなかったという結論を導いた。それを言い換えると、急加速は車単体の問題では無いという結論である。しかし、現に急加速は起きているのであり、調査の結論を更に拡大的に解釈すれば、急加速は車と運転者という人間・機械系の問題であった示唆しているように思われる。しかし、文書の公開に関してはそれなりの規定と制約の中で行われているので公開された文書を読むに際してはその点に留意する必要があるだろう。

人間・機械系の問題として、トヨタはリコールという形で責任を認めていると考えられる。見方を変えれば、トヨタは車体の方では白になったが、人間・機械系という泥臭い方面では白以外の対応の必要性が残されているのかもしれない。尚、ドライブレコーダー関係の文書も公開されていたがACROBAT READERのVERが古いのかファイルを開けなかった。米運輸省とNASAの調査が今後どのような方面にどのような影響を及ぼすのかは分からないが、手放しでは喜べない気がする。この問題の攻守の立場を代えた場合、日本は何をどこまで出来たろうか。米国の低力を感じる。