老人の寝言/出番無きマニュアル:東京電力福島原発事故時に、事故時運転操作手順書は有効に機能したか

2011/11/1
昨日も晴天。午後はやや雲が多かった。庭の松の縮伐続き(http://af06.kazelog.jp/itoshikimono/04c_syukubatu_cut_and_try.html)。手入れ不足で枝葉が伸び放題。丸坊主に近くなるほど切りつめた。枯れるも良しと割り切った。太い枝から切ったので細い枝が残っている。成長は遅くなり剪定の手間も省ける事を期待している。「太い枝から切れ」というのは果樹の剪定で学んだ。切った枝は元に戻らない。切る切らないの決断が必要だ。シャツが肌に張り付いてしまった。引っ張ると痛い。何事だと見ると松の切り口から出た松ヤニがしみ込んでいた。戦後最高値(1ドル=75円32銭)を記録し、円高が止まらない。白色の山茶花と菊が咲き出した。山茶花は蕾の開きかけから開花直後頃までは特に
綺麗なようだ。

2011/10/31の天気

TAVE= 17.0
TMAX= 23.9
TMIN= 12.4
DIFF= 11.5
WMAX= 6.2
SUNS= 7.1
RAIN= 0.5

老人の寝言/出番無きマニュアル:東京電力福島原発事故時に、事故時運転操作手順書は有効に機能したか

世間にはマニュアル人間云々と言い、マニュアルを軽視する風潮もある。マニュアルの意味は、「manual【名】①〔機器などの〕取扱[操作]説明書、マニュアル②《音楽》〔オルガンなどの〕手鍵盤③《軍事》〔小銃の〕訓練、演習」とある。英語で調べるとその語源は「Origin: 1375--1425; < Latin manua-lis (adj.), manua-le (noun) (something) that can be held in the hand (manu(s) hand + -a-lis, -a-le -al1, -al2); replacing late Middle English manuel < Middle French < Latin, as above(url=http://dictionary.reference.com/browse/MANUAL)」とある。まさに物事を操作するラテン語の「手」に語源があるわけだ。手は口より下だ。口先だけで全てが片づくと考えると労働観が崩壊してしまう。こつこつと手足でする労働が社会の原点になくてはならない。

東京電力福島原発事故の検証にため、衆議院 科学技術・イノベーション推進特別委員会が東京電力に福島原発の「事故時運転操作手順書」の提出を東京電力求めたが、東京電力が提出した「事故時運転操作手順書」は数ページで、それもほとんどが黒塗りにされていたので、ゴウゴウとした不満が渦巻いた。東京電力は黒塗りの理由として、「テロ対策の核防護や知的所有権などを挙げていた」が本心は別の所にあるのではという推測もあった。それが、ようやく提出された。この「事故時運転操作手順書」がどこにあるのか探したが、経済産業省のホームページの2011年10月24日の報道発表として公表されていた。「衆議院科学技術・イノベーション推進特別委員会への東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故原因の検証に必要な資料の提出について(url=http://www.meti.go.jp/press/2011/10/20111024003/20111024003.html)」。

福島原発事故の検証の最大の目的は何か。それは、同じ事故・同類の事故の再発防止以外にないだろう。検証の結果は当然、組織体として後々の原発事故にフィードバックする必要がある。そのようなシステム体系の一つにISO9001があり、東京電力は柏崎刈羽原子力発電所でISO9001の認証を取得したとされている。東京電力は福島原発事故に先立ち、2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震で原発事故を体験している。またWIKIPEDIA、「東京電力原発トラブル隠し事件:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%96%E3%83%AB%E9%9A%A0%E3%81%97%E4%BA%8B%E4%BB%B6」も多発している。東京電力は真摯に物事に対応してきたのか。柏崎刈羽原子力発電所のが福島第一原子力発電所に展開されていたら事態はもう少し良かったのだろうか。ISO9001も看板に終わっているような例もある。どうせ役に立たないからそんな業務はやらぬ方が良いと割り切る経営者もいるだろう。

JCOの臨界事故では表マニュアルと裏マニュアルがあり、日常の作業は裏マニュアルが使われていたとの記憶が残っている。会社生活では業務マニュアルを書いた経験がある。ともかく、マニュアルがあれば、業務の全容が掴みやすくなる。コンピュータのプログラムはコンピュータの実行手順書だ。このプログラムが適正に書かれていればコンピュータも正常に動作する。出番無きマニュアルとは、マニュアルが、問題が発生した時、ようやく出番を迎えるような意味で使っている。しかし、マニュアルがあるだけでも、問題解決の手がかりになるのだ。東京電力の事故時運転操作手順書の作成者もきっとこのマニュアルの出番が来ないようにと願いつつ書いたのかもしれない。

経済産業省の上記公表の、(別添3)1号機 事故時運転操作手順書(事象ベース)、(別添4)1号機 事故時運転操作手順書(シビアアクシデント)を拾い読み。「第一運転部(主管部)」とある。一番の関心は誰が何をするかの規定である。それが「6.責任と権限」で、「本業務における責任と権限の所在を以下のとおりとする。」として、「職務:操作責任者、責任者:当直長、役割:操作の責任を有する。」とある。これは、船舶や飛行機で言えば、船長や機長に相当する職務であろう。一つの原子力発電機の当直長は、その原子力発電機に精通して、その原子力発電機を操作し、機能遂行、人命・財産の保護等を行う責任と権限を有するのだろう。限られた範囲、限られた状況では当直長に原子力発電機システムの操作権限と責任を委ねているのだろう。重大な緊急事態においては、独断遂行も許されるというのが一般的な理解なのだろう。

福島第一原子力発電所事故直後は原子炉は三重の壁に守られて、原子炉の健全性は保たれているというメッセージがあちこちから流れてきた。それから、半年以上経過して「原子炉の健全性」という言葉は、空虚に響くどころか、ほとんど聞かれなくなってしまった。福島原発事故はその初動対応という点で多くの疑問を残している。その最大の疑問は、地震や津波が襲った時点で、東京電力の経営トップの会長、社長がどのような役割を果たしたかである。平成23年3月11日は金曜日。WEB情報によると会長は海外、社長は関西と業務外物見遊山だったとか。金曜日に物見遊山で土日は休みというようなスケジュールを組めるのはサスガだ。業務出張だったのか。東京電力福島原発事故で、原子炉への海水注入の問題でも不可解な事があった。原子力発電所所長の独断専行を処分すると経営トップが発言した記憶がある。事故時運転操作手順書によれば、原子力発電所所長の独断専行は当然の権限と責任の範囲にあるように思う。命令の指示と許可等があいまいなままうやむやになったいるのではないか。「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」は内閣官房に設置されて中立性がないとの批判を受けて、国会にも同趣旨の委員会ができた。

asahi.comは、「原発事故調設置法が成立 次の臨時国会で設置;url=http://www.asahi.com/politics/update/0930/TKY201109300254.html(2011年9月30日13時58分)」というタイトルで、「東京電力福島第一原発事故の検証のため、国会に有識者の事故調査委員会と衆参国会議員の両院合同特別協議会を設ける「東京電力福島原発事故調査委員会設置法」と改正国会法が、30日の参院本会議で全会一致で可決、成立した。次の臨時国会で設置される。 」と報じた。

東京電力福島原発事故で、事故時運転操作手順書がどこまであいまいな事態を解明してくれるかは不明だ。権限と責任は上層部になればなるほど曖昧になってくるようだ。経営者は文書に書かれたような仕事はできないと崇高な使命を持って事態にあたれば結構だがその姿はマニュアルからは見えない。東京電力ホームページのトップページは「被害にあわれた皆さまへ」と損害賠償についてが最先端に表示される。経営方針がかすんで見えない。「経営方針・会社概要(url=http://www.tepco.co.jp/ir/management/index-j.html)」のページにも見えない。「グループ経営理念(url=http://www.tepco.co.jp/ir/management/index-j.html)」には「第1の経営指針:「社会の信頼を得る」、第2の経営指針:「競争を勝ち抜く」、第3の経営指針:「人と技術を育てる」」とある。これは東京電力全体で検証して頂きたい所だ。

ISO9001(品質マネジメントシステム規格)によれば、監査機関が第三者(利害関係者、顧客等の被監査機関以外の代表)の立場で監査に当たる。監査機関と被監査機関の秘密は契約で保証される。このような標準的なシステムで、会長、社長の業務マニュアルが作成されて、監査時に会長、社長が監査に対応するならば経営トップも自己の業務を認識するだろう。うちの会社はそんな第三者のやっかいになるほどうらぶれていないと大企業、優良企業は唯我独尊の態度をとるかもしれない。権限と責任が属人的な特性だとするのは余りにも前近代的だろう。それでは人物の器量で職務が決まってしまう。東京電力の第1の経営指針は「社会の信頼を得る」である。これがお題目でないことを証明するにはISO9001の認証を取得すればその最低レベルを証明できるのではないか。あの黒塗りの事故時運転操作手順書を見ると出番無きマニュアルが思い出されてしまう。

「ISO9001とは(url=http://www.jab.or.jp/mas/05.html)」が参考になった。