2009/2/25
宇宙を飛んだ集積回路
集積回路の開発を担当していて、時には思いがけない事態に遭遇することがある。米国での
売り込みが成功したのか、NASAのモニターカメラ用にCCDが採用されることになったと報
告があった。CCDは単独で動作できず、それを駆動するドライバーが必要であった。そのド
ライバーの開発を担当したのが自分の属するチームであった。これらの製品は民生品として
開発されたので宇宙で使用できるのか心配になった。微細化したDRAM等では宇宙を飛び
交うα線等の粒子がメモリーの誤動作をさせる事が知られていた。従ってそのようなデバイス
を宇宙で使用するには放射線対策をする必要があった。民生用集積回路ではそこまで対策
をしていない。宇宙での具体的な使用条件は皆目分からないので要求されたデータを測定し
て送った。チームでやった仕事はそこまでであった。実際にカメラを組み立てシステムに組み
込むのは更に膨大な作業が必要であったと思う。今言えるのは、きっとあの集積回路は宇宙
を飛んだに違いないという事だけである。宇宙で動作させる機器は高度の信頼性を要求され
る。巨費を投じて打ち上げられる搭載機器は修理して使わないのが原則的である。予定され
た期間確実に動作することが要求される。国産のH2Aロケットも商用運用されるときはコスト
競争にさらされる。どのような集積回路が使われているか興味があるところである。