職場の主電源スイッチ接断儀式

2009/2/19

職場の主電源スイッチ接断儀式

入社した当時はまだマイカー時代は到来していなかった。経済の高度成長期の1960年代

三種の神器といわれた3Cはカラーテレビ、クーラー、カー(自動車)であった。経済的ゆとりも

無いので3Cとは無縁の期間があった。従って、通勤は自転車と電車の併用であった。数十

人が働く実験室に大抵朝一番に到着した。先ず、出勤カードを返してから、 実験室に入り大

きな主電源スイッチを入れる。ドンというやや大きな音がする。これで実験室の稼働準備が

終わる。残業があり最後になったときは、朝と逆に主電源スイッチを切って帰る。こうい始業

と終業の儀式をかなりの期間続けた。ほとんど、誰も知らない自分だけの儀式だったかもし

れない。この始業と終業の儀式を毎日、長期に続けると何か仕事に対する不思議な感慨を

味わう。これから仕事だ。ドン。一日が無事に終わった。ドン。会社の仕事の最初と最後に自

分が立ち合っている...。感謝、安心、自負...。ふっと、ミレーの晩鐘の絵を思い出した。