2009/6/4
技術者セールスマン
自分で作ったものは自分で売れと入社直後から上長から叱咤激励された。高機能の集積回
路は用途が限定されるため、売り込み先はその集積回路を使うメーカーだけにになる。新製
品を開発しても直ぐに使ってくれるような状況ではなかった。自分が上司の鞄持ちのような立
場であるメーカーを訪問したときは門前払いに近いような雰囲気であった。お宅が、どんな良
い物を、どんなに安くもってきてもウチは検討できませんというような具合であった。セットメー
カーが自社部品を使うという方針が崩れない限りこの壁は破れない。しかし、現実はこういう
純血路線の維持は行き詰まる事が少なくない。要するに一社で全部の部品をまかなうほど
のゆとりは無くなってくる。ハードディスクやパソコンの基板等に実装されている部品をじっくり
みて感慨にふけることがある。上司も技術者その鞄持ちも技術者。セットメーカーにサンプル
を持って売り歩く。何回も無駄足を運んだように思ったが、最終的にはその努力が報われ
た。顧客も異分子を取り入れて何らかのメリットを受けた筈である。場合によればそれは社
内部品との競合を招いたかもしれない。しかし、部品は生き残れなくても製品が生き残れな
ければ本も子もなくなる。技術の厳しい競争が製品競争の活力の一因であったのも事実であ
ろう。