2009/7/3
稚蚕飼育所
養蚕が盛んであった頃、小さな蚕を共同で飼う稚蚕飼育所が作られた。農業に於いては、管
理の合理化という見地から、発育初期と中期及び後期を分離する傾向があるようだ。数は同
じでも、その量の差が大きくなる。また、幼齢期の管理は細かな配慮が要る。また、万一失
敗すると後続の仕事に大きな支障を及ぼす。稚蚕飼育所は養蚕農家が組合を作り出資して
建設・運営を行った。稚蚕飼育というと細かな仕事が多い。従って実務は各農家の女性が担
当したようだ。聞いた話によると、皆負けん気を出して我先に仕事をこなしたとの事である。
そういう点で、共同作業だから手抜きや楽をしようとする事は無かったようだ。やはり、養蚕
で一家を背負っているという気概があったのだろう。また、蔭であれこれ言われるのを嫌った
のかも知れない。地域により養蚕の衰退とともに稚蚕飼育所も組合も解体されているよう
だ。しかし、往時の記憶を語るようにひっそりと残っている場合もあるようだ。これも地域産業
の遺産かもしれないがいつまで残るのか気になる所である。