2009/9/15
人間機械論
米国の数学者N.ウィーナの著作だ。神童も大人になればだだの人と言われる例が多い中こ
の人は生涯天才であった。大学では学問の結果だけは教えるがそれがどのような背景で生
まれたかはあまり教えてくれない。たとえば、自動制御等の科目等では数式の羅列になって
いる場合が多い。マックスウェルの電磁界方程式は非常に完成度が高い。大学の先生曰く、
マックスウェルはこの式を導く時に色々な計算を繰り返したと思われるが、式を完成させる為
に使った梯子は全て取り外してしまった。丁度偉大な芸術作品が作られた現場が見られない
のと同じである。N.ウィーナは人間や機械の本質は何かも追求したのだが、それは哲学に
通じるものであったろう。N.ウィーナのもう一つの著書サイバネティクスも名著と言われるが
難解であった。サイバネティクスはミサイルを打ち落とす事や宇宙ステーションを打ち上げて
運用する事等の基本技術の基礎でもある。すなわち情報と制御の基礎的な学問をN.ウィー
ナが提起した。今日の情報化社会はN.ウィーナを忘れさせるまでに発展してしまったが、
N.ウィーナが人間には人間にふさわしい仕事が与えられるべきであるとした哲学的な課題
は未だ解決されていないと思われる。皮肉にも情報化を進める現場の科学者、技術者、知
的労働者等が非人間的な厳しい扱いを受けているようでもある。優秀なプログラマーといえ
ども自分の能力の何百倍何千倍の巨大のプログラムを作ることは出来ないし、膨大なプログ
ラムを維持管理することすらできない。その優秀なプログラマーもやがて退役してこの世を去
って行く。経営者は安定に走っているシステムからは人材を引き剥がしてゆくだろう。しかし、
社会の裏側で走っているコンピュータは一瞬といえども止める事ができない。万一大地震等
が起こったら情報化社会の頭脳・神経網はどうなるのだろうか。