2010/2/13
永年勤続
終身雇用制は崩壊してしまったのか。雇用も労働の切り売りに過ぎないとドライに考えること
も可能であろう。マルクスが労働に目をつけたのはやはり、イギリスや西欧の社会が解明・
解決すべき問題を孕んでいたからであろう。その問題は、余りにも本質的であったため全世
界を席巻した。進化という興味ある現象では、「サルが人間になるにあたっての労働の役割」
というエンゲルス著作も目を引いた。ともかく、青年時代は色々な事に関心があった。人はパ
ンのみに生きるにあらず。しかし、パンがなければ生きることはできない。パンがなければお
菓子を食べればよいというのが今日の状況なのかも知れない。高校の社会科目では世界史
を選択し、マリー・アントワネットの処刑等も学んだ。先生の脱線話だったかもしれない。とも
かく、自分の青年時代は労使の対立が激化していた。パイの奪い合いだったのか。いまでは
社会主義も資本主義も双子の兄弟のように見える。食料生産能力は人口を養うには十分以
上になった。終戦直後の空腹感からは解放された。それでももやもやした不満や不安が漂
う。当時は兄弟でも飯の奪い合いがあり、並んで飯を盛ってもらった。飯を公平に盛ってもら
った人が親に感謝する文章を読んだ記憶もある。何とか飯の心配が無くなり、借金で家を作
り、ようやくほっと一息ついた頃には既に勤続30年になっていた。そうして、その記念に夫婦
での旅行券が支給された。出不精で、夫婦だけで旅行に出かけた事もほとんど無かったの
で記憶に残る旅となった。贅沢な気分になったのは、観光地回りは相乗りの観光タクシーだ
ったが、相組が参加しなかったので借り切りになった事である。これも、会社に福利厚生に支
出するユトリがあったおかげかも知れない。その前年頃、上司の定年退職祝いを盛大に行っ
た。これも、会社や社会に活力があったからできた事であろう。しかし、勤続30年を祝って息
子が文房具セットを贈ってくれたのが何よりもうれしかった。それは、まだ使わずに引き出し
の中にしまってある。