2010/3/3
方丈記随読4B
「いま日野山の奧にあとをかくして後、南にかりの日がくしをさし出して、竹のすのこを敷き、その西に閼伽棚を作り、うちには西の垣に添へて、阿彌陀の畫像を安置したてまつりて、落日をうけて、眉間のひかりとす。かの帳のとびらに、普賢ならびに不動の像をかけたり。北の障子の上に、ちひさき棚をかまへて、黒き皮籠三四合を置く。すなはち和歌、管絃、往生要集ごときの抄物を入れたり。傍にこと、琵琶、おのおの一張をたつ。いはゆるをりごと、つき琵琶これなり。東にそへて、わらびのほどろを敷き、つかなみを敷きて夜の床とす。東の垣に窓をあけて、こゝにふづくゑを出せり。枕の方にすびつあり。これを柴折りくぶるよすがとす。庵の北に少地をしめ、あばらなるひめ垣をかこひて園とす。すなはちもろもろの藥草をうゑたり。かりの庵のありさまかくのごとし。」
方丈の付属設備、調度品、用具、日用品、趣味の用具などを記している。住居兼書斎兼寝
室等。ビジネスホテルの一室の様でもあり一通りの生活はこれで間に合ったのかもしれな
い。とこに敷いたつかなみとは何か。ネットの古典通解辞典を参照:つかなみ (名)「束並み」
の義。わらを畳ほどの広さに編んだ敷物。わらぐみ。方丈記「つかなみを敷きて夜の床とす」
ずばり。感謝。この一節は、高校の古文でならったかすかな記憶がある。世を捨てても神仏
は捨て切れぬ。ほどほどの孤独を思う。孤独も紛らわすものがあれば、捨てるほどでもない
のかも知れない。