2010/3/1
分散化
自分が経験した集積回路の仕事の中で、電源関係の仕事は色々な面で役に立った。最初
の頃は電源はメイン電源があれば十分ではないかと思う事もあった。電源は人間に例えれ
ばご飯等のエネルギー源。しかし、毎日安定して飯を食えるようにするには、米を運ぶルート
等のシステムの中で考えなければなぜ電源が必要なのか理解できない。回路網の中である
回路を動作させる為には、回路のご飯である電力が安定に供給される必要がある。そのよう
な機能を持つのが安定化電源である。この安定化電源を通していくつかの回路を動作させる
と全体のシステムの動作が安定する。今日のパソコンも複雑な安定化電源を備えている。こ
の、安定化電源が無ければパソコンの処理はエラーの山となりパソコンの機能は実現できな
いだろう。回路が複雑になると、そこにエネルギーを供給する電源ラインも複雑になる。まさ
に、メイン電源を人体の心臓に例えれば、各器官に血流を運ぶ血管が電源ラインになる。電
源ラインに流れる電流は各ブロックの動作を反映して刻々変化する。従って、大本で電源を
安定化するには相当高性能な装置を要する事になる。ここで、発想を変えて、その安定化機
能を末端のブロック毎に持たせてシステム全体の安定化をさせようとするのがローカルレギ
ュレータレータ方式と言われる。いわば、組織の末端にも小さな心臓を付ける事に相当す
る。一方、システムが大きくなると回路設計技術者は、いちいち電源回路の設計に立ち入る
のは大変になる。そのような背景で、生み出されて来たのが三端子レギュレータと言えるだ
ろう。端子数から見れば、これ以上少ない端子で動く集積回路はほとんど無いであろう。この
ような手法で、システムの設計、構築、運用、保守等のコストを下げ、システムの増大とシス
テムの安定に対応できた訳である。これは、あくまで電子回路の世界の話ではある。しかし、
回路自体は抽象的な概念の上に成り立つ。同じ様な構造を持つシステムにも成立するので
ある。今日の技術では一台のパソコンにはCPUが1個であるが、いくつものCPUが使われる
時代も来るであろう。要するに、分散化は機能増大を解決する有効な手法であろう。それ
は、コンピュータの歴史をみれば理解できるであろう。このようなシステムの考えは社会シス
テムにも通用するのではないか。