読みかじりの記:指揮官 -人間掌握の秘訣- 源田実 著 (時事新書 1968年)

2011/6/6
昨日は薄日がさしたが、蒸し暑さを感じた。夕方、雨蛙が鳴いた。直近の雨蛙の鳴き声もも天気予報に役立つが、外れる事もある。鳴き出す条件は、気圧か湿度か。アメダス(前橋)のデータでは、湿度60%、気圧990hPa程度であった。総理大臣の早期退陣が現実的になって、政界が色めき立ってきた。節操のない行為...漢文で習った「手を翻せば~」まで思い出したが、それ以上は出てこない。WEBで探すと貧交行に出てくると分かった。それを以下に引用。

杜甫の雑言古詩「貧交の行」

  翻手作雲覆手雨    手を翻せば雲と作(な)り手を覆せば雨と作(な)る 
  紛紛輕薄何須數    紛紛たる輕薄 何ぞ數ふるを須(もち)ひん
  君不見管鮑貧時交  君見ずや 管鮑貧時の交
  此道今人棄如土    此の道 今人棄てて土の如し

まさに、昨日は政敵に内閣不信任案を投げつけた敵が、今日はお互いに友となり手を結び大連立政権を作ろうというその節操の無さに、杜甫もびっくり仰天するのではないか。事は人と人というレベルの問題ではない。公約を掲げて政権運用を使命とする公党間の問題だ。与党も野党もまさに個人商店のレベルでしかない。紛紛たる輕薄を率先する指揮官に日本の将来が託せるのか。

昨日の天気

TAVE= 21.6
TMAX= 25.9
TMIN= 17.4
DIFF= 8.5
WMAX= 3.6
SUNS= 2.6
RAIN= 0.5

読みかじりの記:指揮官 -人間掌握の秘訣- 源田実 著 (時事新書 1968年)

この本も福島原発事故を契機に本棚から探し出した一冊。出版時期は丁度自分が社会人になるころ。いつ読んだか不明だ。「源田実;url=http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%90%E7%94%B0%E5%AE%9F;(最終更新 2011年6月3日 (金) 10:19 )」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)。の記事に「源田 実(げんだ みのる、源田 實、1904年(明治37年)8月16日 - 1989年(平成元年)8月15日)は日本の広島県山県郡出身の大日本帝国海軍軍人、航空自衛官、政治家である。海軍における最終階級は大佐、航空参謀を務めたこともある。神風特別攻撃隊の考案者の一人。戦後は初代航空総隊司令、第3代航空幕僚長、参議院議員等を務める。」とある。著者の全貌を知るにはWIKIPEDIAの記事等を参考にする必要がある。

本書の背景としては、戦前が軍人が跋扈した時代なら、戦後は経営者が軍人に代わって世間をリードしたという人物観の切り替わりがあったと思う。本書は始末記物の本の次ぎに書かれている。参謀としては優秀な人物なのかも知れないが、参謀と指揮官という関係についての記述は余り印象に残らなかった。孫子の兵法の解釈に関しては軍人らしい読み方をしているように感じた。歴史に学べという教訓は遅きに失したと思う。著者が大本営参謀だったときの年齢が40才前頃だろうか。本当の仕事をするときに歴史が役だって欲しい所だ。将は参謀をいかに使うべきかを参謀が論じるのも難しい立場に違いない。戦争とは一面政治の特殊形態という説もある。著者は戦争を遂行した参謀という立場の人物なので、その現場の見聞は余人に代えられないだろう。

いわば、平時以外の緊急事態を取り仕切る指導者像はどうあるべきかという問題を、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震のTV報道に釘付けになりつつ漠然と感じていた。何故か。東北地方太平洋沖地震発生:2011年(平成23年)3月11日14時46分18秒。その一時間以内に東北地方東岸各地に津波が到来している。それをほとんどの国民が注視しているなか、日本の最高指揮官の動きが全く見えなかった。総理大臣がTVに現れたのは17時頃ではないかと記憶している。これでは、いかにも遅すぎる。原稿など不要。大至急、一言だけでも国民に対する緊急アピールをすべきではないかと感じた。

本書では、第3章 将の人格構造で、将たる者の内面の問題について論じている。非常に興味ある事項であるが、脳内の事なので総理大臣の内面にまで迫る事は至難な業だ。しかし、結果からみると内面の乱れや葛藤が緊急事態対応の遅れを招いたと感じる人が多いのではないか。それを示す最大の総理大臣の行動が福島原発の唐突な視察である。見方によれば、功をあせり、時間を空費した。戦時においては、権謀術数、正奇虚実の諸方策は当然だが、平時においては信に基づくべしと著者は本書で述べている。傾聴に値する事であろう。第4章 近代組織における統率の章では、近代では、しっかりした目的を持った組織が出来上がっているのだから、それを有効に活用すべきだと述べている。将は参謀と兵を使いこなして目的を達成する責任がある。将が統括する組織数は、多くて5組織で、2組織が望ましいという事も述べている。この指摘も、雨後の竹の子のように新規に林立した各種対策本部等を見ると、東日本大震災震災対策の組織論としては傾聴に値するだろう。

ともかく、各界で将たらんと欲する人物は日頃から自己研鑽に励まなくては人生一回だけの大勝負に臨めないということなのだろう。本書は大本営参謀の失敗学の成果なのか。功は求めなくても向こうからやってくる。功を求めると離れて行く。そんなパラドックスも見えなくもない。陸軍参謀辻正信の名前やその讃え難い功績は聞いたが覚えがあるが、海軍参謀源田実は今まであまり馴染みではなかった。軍とはモデル化しやすい組織である。その軍さえ統率が非常に難しい。まして、国家を率いる事の困難さは筆舌に尽きないだろう。将たらんとする者には参考になる一書だろう。

追記:本書の奥付には、初版6000冊、9刷までで8000冊とある。

以下本題。

かみつけ女流歌人 雅:秋虫のこゑ

歌題=秋虫のこゑ:

■うかららの 集いて祝ふ 吾が米寿 ピアノひく曾孫に 眼のうるむ 101 柳澤 文子

元気で、曾孫がピアノを弾いてくれた米寿祝いを歌に出来るほどの幸せは他にないだろう。