老人の寝言:「除染」という不可解な造語?に日本語のあいまいさを嘆く

2012/1/16
昨日は晴れ。庭の手入れ。ポット灌水。一昨年だったか実生の夏みかんが枯れた。推定1994年頃種まきしたもの。カナムグラがその上を覆いそのまま放置したのであっけなく枯れた。昨年根本にキノコが生えていた。その木を押してみると難なく倒れた。樹木としては材は緻密でないので弱さもあると思うが、キノコの菌類が腐食を進めた可能性もある。

2012/1/15の天気

TAVE= 3.6
TMAX= 7.4 最高気温(℃)  8.3  13:22
TMIN= 0.1 最低気温(℃)  -0.8  00:01
DIFF= 7.3
WMAX= 5.6 最大瞬間風速(m/s) 
SUNS= 6
RAIN= 0

老人の寝言:「除染」という不可解な造語?に日本語のあいまいさを嘆く

最近、言葉についての信頼感、安心感についてなんとなく疑問を感じている。「税と社会保障の一体改革」等その例であろう。「社会保障」という羊頭を掲げ、「税」という狗肉を買わせる下心を「一体改革」という美辞麗句に見てしまわないだろうか。増税法だけは先に成立させ、社会保障法は置き去りにされる懸念は大きい。

また、最近は「除染」の問題が実生活の中に忍び込んできている。自分は「除染」を「除洗」と勘違いしていたふしがある。WEB辞書で調べてみた。「除染(和英)url=http://eow.alc.co.jp/%E9%99%A4%E6%9F%93/UTF-8/?ref=sa。decontamination(英和);url=http://eow.alc.co.jp/decontamination/UTF-8/:decontamination【名】汚染除去、除染」。「研究社 新英和中辞典;decontamination
音節de・con・ta・mi・na・tion 発音記号/di`?k?nt`?m?ne'???n/=【名詞】【不可算名詞】1 浄化. 2 (毒ガス・放射能などの)汚染除去.」

英語として放射性物質を除去するとい情報を発信するならば、decontamination=汚染除去を使うべきなのだろう。

原子力防災基礎用語集url=http://www.bousai.ne.jp/vis/bousai_kensyu/glossary/si32.html
除染:「身体や物体の表面に付着した放射性物質を除去するあるいは付着した量を低下させることを除染という。除染対象物によりエリアの除染、機器の除染、衣料の除染、皮膚の除染などに分けられる。 物の除染には浸漬、洗浄、研磨などが行われ、除染剤には合成洗剤、有機溶剤などが用いられる。また、身体の皮膚の汚染には、中性洗剤、オレンジオイルなどが用いられる。」とある。

原子力防災という視点からも、放射性物質による汚染は、比較的範囲が狭いに「除染」という用語を使うように受け取れる。数十ha等広範囲に及ぶ放射性物質による汚染から有害物を除去する事を「除染」と言えるのか疑問符がつくのではないか。

原子力防災用語集(原子力安全保安院=TOPページ > 用語集 > 原子力防災用語集)url=http://www.nisa.meti.go.jp/word/12/0586.html「し行=除染 0586 :衣服などが放射性物質によって汚染 した場合に、必要に応じこれを除去すること。除染の方法としては、衣服の洗濯、全身シャワーによる除染などがある。緊急時においては、1次除染 、2次除染 がある。「1次除染 0003;url=http://www.nisa.meti.go.jp/word/71/0003.html=頭髪、皮膚、衣服などの身体表面に放射性物質が付着していると判定された被災者に対して、まず最初に衣服の更衣や付着した放射性物質の除去を行うこと。応急除染ともいう。」「2次除染 0013;http://www.nisa.meti.go.jp/word/71/0013.html=身体表面に放射性物質による汚染 がある場合、シャワー施設及び薬品により放射性物質を除去すること。」

上記の原子力安全保安院の「除染」の定義も放射性物質による汚染を比較的狭い範囲にとらえていると理解される。「頭髪、皮膚、衣服などの身体表面に放射性物質が付着」した場合は外部被曝となる。
放射性物質が身体に付着すると体内に進入し内部被曝の原因になる。それを防止するのが「2次除染」という事だろう。

ところで、日本語として気になるのがなぜ「除染」という言葉が作られたかという点。漢字の「除」は動詞として取り除くを意味するだろう。そういう点からは「除草」はイメージにぴったりする。電子辞書で「除菌」はあるが「除染」はない。比較的新しい造語だろう。なぜ取り除くかを考えると「除」に「危険、不快」等好ましくない意味が含まれるのも事実。除塵、除湿等々。動詞の「除」の次ぎに目的語が来れば理解しやすいが「染」とは?「除染」が使われる文脈からは「汚染」と類推される。「染」という漢字は水にインクをたらした時のように、その色がじわじわと拡散するさまを示すが、そこにはまだ善悪、快不快という概念はない。今日では、「除染」とは有害物質がジワジワと拡散するのを取り除くという意味に拡大解釈されているようだが、曰く意味不明な言葉である。「汚染」の「汚」を取り除いて「染」を残したと考えると、羊頭狗肉と同様に、臭い物に蓋をした役人の造語に違いないと勘ぐりたくなるのだ。なぜ「汚染除去」と真実を言えないのか。きれい事で済ますのが日本語なのだろうか。

東京電力福島原発事故の放射性物質対策として「放射性物質汚染対処特措法」が制定された。その正式な名称が「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年八月三十日法律第百十号);http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H23/H23HO110.html」である。これでは、法律の名前すら思い出せない。国民は法律など読むなと言っているように感じる。

上記法律が規定する定義は;「(定義)
第二条  この法律において「原子力事業者」とは、原子力災害対策特別措置法 (平成十一年法律第百五十六号)第二条第三号 に規定する原子力事業者をいい、「関係原子力事業者」とは、事故由来放射性物質を放出した原子力事業者をいう。
2  この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(土壌を除く。)をいう。
3  この法律において「土壌等の除染等の措置」とは、事故由来放射性物質により汚染された土壌、草木、工作物等について講ずる当該汚染に係る土壌、落葉及び落枝、水路等に堆積した汚泥等の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置をいう。 」

驚くべき事に、上記法律でも「除染」の意味や定義がされていないのだ。「除染」という言葉が一人歩き初めているようで日本語のあいまいさに改めて失望するのだ。原子力安全保安院の用語定義の「除染」ならば、「除染」が人体やその周辺環境と特定されるが、限界がない地球環境への放射性物質の拡散に対して「除染」があてはまること自体に妄想があるように思えて仕方ない。