読みかじりの記:中村邦夫 「幸之助神話を壊した男」 森 一夫 著 (2005年 日本経済新聞社)

2013年8月13日(火)
昨日は晴れ。最高気温(℃) 37.4 15:26。ざっそう句:俺の墓 考えまいと 墓掃除。同じく墓掃除に来た人とあいさつや雑談。ラジオで高校野球の中継聞き流し。途中から同調が飛んで音がしなくなる。大木の緑陰になっているので余り暑くならないのが有り難い。午後は宅内閑居。地域の歴史誌を拾い読み。つい数時間ウトウト。昨日のGoogleDoodleはこれ:Googledoodle130812erwin_schrdinge_3 シュレディンガーの猫を描いている。生誕126年。英語版でも表示されたので多くの人が見ている可能性がある。 これをクリックするとGoogleによる「Erwin Schrödinger」の検索になる。そのトップがこの記事: (コピペで記事の最末尾に挿入?) 

2013年8月12日の天気(AMEDAS)

TAVE= 30.4 NO DATA
TMAX= 36.9 最高気温(℃) 37.4 15:26
TMIN= 26.1 最低気温(℃) 25.9 23:50
DIFF= 10.8  
WMAX= 4.7 最大瞬間風速(m/s)(風向(16方位)) 9.7(東北東) 19:24
SUNS= 8.7 NO DATA
RAIN= 0 NO DATA

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読みかじりの記:中村邦夫 「幸之助神話を壊した男」 森 一夫 著 (2005年 日本経済新聞社)

最初に人名の標記の悩ましさについて:本書では「中村邦夫」の{邦}は偏の横三本棒を斜め線が突き抜けていない異字体を採用している。しかし、その体が漢字フォントに無いようでパナソニック株式会社のホームページでも便宜的に「邦」を採用して、正式漢字名を注記で示している。

本書の腰巻きのキャッチコピーが懐かしい。曰く、:
『「松下電器」から「Panasonic」へ   松下電器のV字回復を成し遂げた中村邦夫は、松下の何を変え、どこへ導こうとしているのか?』

実は、本書は読みたくて読んだ部類の本ではない。現在のパナソニックの哀れな状態を自分に納得させるために嫌々ながら読んだ本と言えばそう言えるかも知れない。

現役時代、営業部門に駐在して、松下グループの技術部門を営業担当と回ったことがある。1997~1998年頃で、パナソニック(株)ホームページの社史によると、
1997年(平成9年) 社内分社制を導入
1998年(平成10年) 創業80周年を迎える
1998年(平成10年) デジタルテレビを米国で発売
の頃である。各事業部門が○○社と呼ばれていたように記憶している。

営業担当は、自分の担当部門に半導体を売り込むのに色々な手を使った。そのために、技術相談で出張して欲しいとお呼びがかかった。訪問したのが、電気アイロン等を製造している部門。電熱応用分野では半導体の使用も微々たる物だろうと思っていたが、松下電器のそういう部門を訪問する機会も無かろうと承諾した。技術者と話をしていると、社内製品購入運動というような事もあるらしかった。そこで自分の部門で製造している物を何か買ってもらえないかという話になった。そんな事があって、数回訪問したと思う。結局、ズボンプレッサーを買うはめになった。

単身赴任で、ズボンプレッサーを使えば、ズボンのアイロンかけよりより楽だろうと思ったが、結局数回使っただけでほぼ新品状態でお蔵入りした。電気アイロンは現在でも商品があり家電のロングセラーだろう。同社ホームページでズボンプレッサーを検索したが情報は無かった。完全に過去の製品になったのだろう。ともかく、そのような伝統のある部門で黙々と働く技術者がいて、そういう技術者と会えたのは駐在の収穫だったと思う。

本書を読みかじって、経営トップの人名をタイトルに取り込んだ点は何となく違和感を感じた。確かに、本書出版時点では、パナソニック(株)の社長は注目の的だったかも知れないが。本書は、パナソニック(株)の人事や組織を中心に書かれているが、言葉に酔っているようにも感じた。これは、事後読という読み方で、同社の業績が落ち込んでいる時に、物事を批判的に読んでしまうためかも知れないが。どうも、ヨイショが過ぎるようだ。反対に、会社の末端で働いている技術者や従業員の意識にどこまで切り込んでいるのか。やはり、上から目線の本で終わっているのか。門外漢としては何とも判断できないが。だが、パナソニック(株)にも地上の星が輝いていたのではないか。自分が開発したホールICでは、先行していた松下製品を参考にさせてもらった。当時、国内でホールICを生産できる会社は少なかったと思う。

ここで、パナソニック(株)のホームページに掲載された経営データをグラフにしてみた。同社社史によれば、「2000年(平成12年) 中村邦夫※社長就任 」である。経営データは2003年からあり、確かに売上高は、その年から急上昇している。本書はその急上昇の中間時点で書かれている。そうして、2009年に急降下する。
Iob_panasonic_keiei_sisuu_20032012_

http://www.nikkeibook.com/writer/1818/によれば、著者の作品として以下が掲載されていた。
出版年次別に並べると:
日本の経営 ―会社と人間のあるべき関係―(2004年3月発売:日経文庫)
中村●夫「幸之助神話」を壊した男(2005年4月発売)
中村邦夫「幸之助神話」を壊した男(2006年10月発売:日経ビジネス人文庫)
経営にカリスマはいらない(2008年12月発売)

本書後の、著者の作品「経営にカリスマはいらない(2008年12月発売)」は何か興味をそそるが、著者の世界観の転換なのか。

「読みかじりの記:シャープの謎 勝ち続ける日本力! 長田貴仁 著 (2004年 株式会社 プレジデント社)(http://af06.kazelog.jp/itoshikimono/2011/09/2004-3754.html)。(2011/9/27)」この記事も、シャープの凋落を気にしつつ読んだ。

WIKIPEDIA「中村邦夫。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%91%E9%82%A6%E5%A4%AB)」

WIKIPEDIA「大坪文雄。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%9D%AA%E6%96%87%E9%9B%84)」

WIKIPEDIA「津賀一宏。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%A5%E8%B3%80%E4%B8%80%E5%AE%8F)」

WIKIPEDIA「プラズマディスプレイ。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%9E%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%A4)」

松下電器産業株式会社及び東レ株式会社は、「世界最大 10面取りで月産100万台  PDP国内第5工場を兵庫県尼崎市に建設  2009年5月稼動開始予定。http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn070110-4/jn070110-4.html。(2007年1月10日))」というタイトルで、「松下電器産業株式会社(社長:大坪文雄)と東レ株式会社 (社長:榊原定征)は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP)の新たな生産拠点として、両社の合弁会社である松下プラズマディスプレイ株式会社(以下、MPDP社)の第5工場を、兵庫県尼崎市(現工場隣接地)に建設し、世界最大の量産体制を更に拡大します。 新工場は、2007年11月に着工し、2009年5月に第一期の稼動を開始する予定です。投資額、約2,800億円で月産100万台(42型換算)を生産する世界最大のPDPの量産工場となり、投資生産性についても第1工場比で5倍以上と世界最高の投資効率となります。圧倒的な生産規模とコスト力で、世界における薄型大画面市場をリードします。」と報じた。

前の経営データグラフと2007年に出されたこのプレスリリースを重ねて見ると、2007年から2009年の間に、激変があった事が窺える。設備投資は2009年をピークに減少している。著者は2005年に本書を出版したが、その数年先の激変を予測できたのだろうか。

松下電器産業株式会社は、「個人投資家様向け会社説明会。http://panasonic.co.jp/ir/reference/stock/stockholder_note.pdf。(2007年9月21日))」というタイトルで、「○“大画面はプラズマ”という当社戦略を、今後も力強く推し進めてまいります。」と報じた。この時点では、プラズマディスプレイ重視の戦略は既定路線の上を突っ走っていたのだろう。

以下は特許電子図書館の登録商標検索データ
松下電器産業株式会社の登録商標:
PanaSonic:【登録番号】 第483598号  【登録日】 昭和31年(1956)6月29日 

PANASONIC:【登録番号】 第619509号  【登録日】 昭和38年(1963)6月28日 

Panasonic:【登録番号】 第1081800号  【登録日】 昭和49年(1974)8月12日 

ソニー株式会社の登録商標:
Sony\ソニ :【登録番号】 第491710号  【登録日】 昭和31年(1956)11月20日 

本書の背景には創業家と経営陣という問題意識がありそうで、「幸之助神話」があたかも現実のような印象を受けたが、どうしても従業員という切り口が見えなかった。そういう点で、「幸之助神話」にマインドコントロールされたのは経営陣の方に見えてしまう。一般の従業員は、いくら頑張っても経営陣に食い込めるのは極少数で、もっと現実的・白けた見方が支配していたのではないか。これは、日本の擬制家族制度的な社会風土の欠点で、会社凋落の傾向もシステムの中に内蔵されたいたかのように思えてしまうのだ。切り込んで貰いたいのこの部分である。

「幸之助神話」を壊したというキャッチコピーにどれほどの真実があったのか。「幸之助神話」が生まれ、育ったのもそれなりの背景がある。たしかに、そこには労使という近代的関係は希薄化していたかもしれない。しかし、労使という緊張関係がシステムのチェックアンドバランスとして役立つ面もあるのではないか。

「パナソニックのTVが3億台達成(http://af06.kazelog.jp/itoshikimono/2008/10/tv-848d.html)。(2008/10/11)」この記事では、TVが元気な内にTVの次の有望商品を育てる必要性があると述べた。現代では、一般のテレビは日用品になってしまった。さらにTV放送のコンテンツもその水準は低下傾向だ。やはり、馬鹿でかく、見た目が綺麗だけの商品の評価は厳しくなるのだろう。それより、スマホの方が総合的に利用価値が高いという事で、TVも曲がり角に来ているのかもしれない。

日本では、口八丁、手八丁のサラリーマンが経営者まで上り詰めるというパターンが多いが、そういう小手先の感覚だけで、激動する技術の動向を読み、巨大な組織を動かし、巨大な市場を支配するには過重な段階に来ているのではないか。更に、多数の役員が小田原評定をしているようだと外国の経営陣に太刀打ちできなのではないか。

最近多くの企業に見える傾向だが、組織いじりをして、組織名を縦から横文字に変えて、それで一仕事したような組織改革は、経営力衰退の兆候のように見えてしまう。要するに組織変更は、一時しのぎの隠れ蓑のようになっている場合が多いのではないか。

創業者が創業したという点だけは、いかなる後継者も乗り越える事ができない。そういう点で創業者は神と言えるのかも知れない。その創業が偉大なほどその神の性格も強くなる。後継者が、その時の最高位に着いた時、創業を超えようとする誘惑にとらわれる事は多分あるのではないか。まさに、それが最高のチャレンジなのかもしれない。最も危険なチャレンジのようにも見えるが、割り切って考えるとそれも当たり前かも知れない。競技の世界では自分より前を走っている者はすべて対抗者だ。個人競技のチャレンジは多いに結構だが、膨大な人数が関係する事業を個人競技感覚で運営される末端の人間はどんな悲哀を味わうのか。

Googleによる「パナソニック リストラ(http://www.google.com/?hl=ja#bav=on.2,or.&fp=425aa99e5d9d67c7&hl=ja&q=%E3%83%91%E3%83%8A%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%80%80%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9)」の検索。

リストラも一度始めて、うまく行くとそのその魔力の虜にされてしまうようだ。これも負のスパイラルだ。本書は猛暑の中で読んだが、中身は完全に蒸発してしまったようだ。自分が現役中に会った松下マンもすでに退職したり、退職時期を迎えたりしている頃だと思う。多分、惚れて入社した人が多いだろう。松下マンが会社を離れてどのような会社の思い出を残せたのか知りたいところだ。

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Google Doodle Celebrates Physicist Erwin Schrödinger … and Cats!