2008/9/18
あげはの幼虫
蝶々の舞うはこの世の旅支度 照緑
ひらひらと舞う蝶を見ると優雅なおもいがする。
でも、遊びで飛び回っているのではない。
蜜柑の木やカラタチにアゲハチョウが飛んできてあちこちに飛び移ってゆく。
産卵をしているのである。
卵から小さな幼虫がかえる。
数㎜の黒っぽい幼虫が、白黒の鳥の糞のような幼虫に成長する。
更に、10㎜以上ににもなると緑色に変色する。
グロテスクで不意に出くわすとびっくとする。
食欲も旺盛になる。
成長中の若葉を好んで食べるので被害が大きくなる。
いやいやながら、つまむとオレンジ色の角を出す。
そこから、またいやな異臭を発する。
ところが、その異臭も遠くでかぐと、果物のように芳しい匂いがする。
身の危険を防ぐためなら異臭も身の回りだけで良いのかと納得する。
葉を食い尽くした所に老幼虫を探すが大抵見つからない。
鳥の餌食になったのか、蛹に変身したのか。
蛹もほとんど見たことがない。
安全な所を探して蛹になるのだろうか。
蛹は次なる変身の部屋だ。
恩返しする鶴が秘密の部屋で機を織るかのように飛び立つ準備をすすめる。
そうして、次ぎに見る時はあの鮮やかな姿のあげはちょうになっている。
小さな生き物が容赦のない自然の中で自分の力だけで生きて行けるのは、
数々の生き残り技術を発明したおかげなのだろう。
そうして、あの優雅な舞い姿はこの世に生まれてきた
最後の仕事の総仕上げであった。