2008/10/10
ノーベル化学賞と花成ホルモン
スウェーデン王立科学アカデミーは8日、08年のノーベル化学賞を下村脩・米ボストン大名
誉教授(80) 、マーティン・チャルフィー米コロンビア大学教授(61)、ロジャー・チェン米カリ
フォルニア大学サンディエゴ校教授(56)に授与すると発表した。受賞理由は「緑色蛍光たん
ぱく質(GFP)の発見と発光機構の解明」。
連日の日本人科学者のノーベル賞受賞に元気づけられる。素粒子は極微の世界を巨大な
装置で暴くことによりその存在が実証される。人類が未知の真理を手に入れるにはそれくら
いの負担は当然であるという考えによるのであろう。間接的には色々な波及効果があるだろ
う。一方、今回のノーベル化学賞の対象は、実用面での応用範囲が広いという特徴があるよ
うだ。生体の中で働いているタンパク質のマーカーとしての応用である。
緑色に光るタンパク質を取り出すときのインスピレーションに感心する。蛍光物質を取り出す
には光らせてはならない。物質そのものが消耗してしまうからとの事だ。その解決策に酸性
にしてやるというインスピレーションがわいたようだ。やはり、あれこれ考えつくし、もう駄目か
もしれないという時の最後のインスピレーションが成功のきっかけになることは多いだろう。
人がやった事の無いことをやるのには信念と勇気がいる。無鉄砲にやっても効率が悪い。何
らかの作業仮説をたてる。いくつかの実験を行い獲物のいる範囲を定め、その範囲を狭め
て行く。そうして最後に獲物を追いつめて捕獲した時が目的を達成した成功の時なのだ。
植物の世界では、花を咲かせるには花成ホルモンという物質が形成されそれが働くことによ
り花が形成されるのであるという仮説がある。しかし、花成ホルモンは極微量で働く物質であ
りそれを特定した人はいないらしい。最近、花を作るきっかけになる遺伝子が特定されたらし
い。花成ホルモンを光らせる事ができれば、どこで働いているかが特定でき、いつでも花を
咲かせることができるようになるのではないか。果物は花がさかなければ実がならない。実を
ならせるまで数年かかる。1年で実をならせることが出来ればすばらしいことだ。現在では夢
かもしれないが、いつかは実現するかもしれない。