2008/12/23
こうせんの香り
こうせんは大麦をいって粉にした食べ物で、地方により麦こがし、はったい粉とも呼ぶらし
い。こうせんを固めたような菓子に麦らくがんがありこれは今日でも お目にかかる。こうせん
は幼少時のちょっと上等のおやつの一つである。ひなびた香ばしさがなつかしい。しかし、子
供にとっては香りよりまぶした砂糖の方がお目当てではなかったかと思う。遊びで飛び回った
後の甘い物の味は格別である。空腹時の砂糖掛けご飯も忘れられない。
今では、実際に「こうせん」を作っている現場を思い出せないが、ものを煎る「ほうろく」という
鋳物の道具や粉をつくる石臼もあった。こういう道具を使って冬の農閑期や正月頃に祖母等
が作ってくれたのだと思う。今でも作ろうと思えばつくれるだろう。こうせんを食べている姿を
思い出す。新聞の切れ端にスプーンで2~3杯すくってもらう。それをペロペロとなめる。
これだけで、フケツー、ギョギワルイになってしまいそうである。現代人は完全に商魂の奴隷
になりはてたようだ。こうせんは素性の分かっている素材を使ってお母さんや、おばあさんが
愛情をもって作ってくれた、本当に安全で有り難いおやつであった。