2009/5/1
蟻地獄
あるお堂の下には空間があって子供が潜り込めた。そこはお堂の床下で土が乾燥してい
た。すり鉢状の小さな穴があちこちにあった。そこに蟻や小さな虫を投げ込むと穴の底から
蟻地獄が姿を現す。投げられた虫は砂の中に引き込まれて消える。たったそれだけの遊び
であった。そのお堂はいつしか建て替えられてもはや床下には潜り込めない。屋根は藁葺き
から銅葺きになったが、行事はいまだ続いている。最初はいつ頃建てられたのか由来は定
かでない。昔の村にはこういうお堂があって何かの役割を果たしていたらしい。祭られている
のは不動尊である。日陰で薄暗くちょっとわびしくもあり、こわい感じのする場所でもあった。
不動尊は疫病や犯罪から住民を守ってくれると言う民間信仰もあったのだろう。今のこって
いる遺物も当時に遡って当時の人の気持ちにならないと理解できない事が多々ある。ふとと
りとめもなく思い出した記憶である。