2009/5/17
たった一個の良品
集積回路の試作品が出来る時は丁度子供がうまれる時のような思いがする。一枚のウェー
ハの上に数百個程度形成される。それを切り出して組み立てる。それから一つ一つ動作を
確認する。ダメ、ダメ、ダメ、...全滅だ。目先が真っ暗になった。念のためと最後に取り上
げたICが予想に反して動いた!しかし、たった一個しか良品が無いとはどういうことか。まっ
たく理由が分からない。限りなく歩留まりがゼロに近いのだ。仕方なく顕微鏡を覗き配線を追
いかけた。なんという事か、本来切れてはならない配線が切れているという配線ミスがあっ
た。本来ならばダメ、ダメ、ダメ、...というところがOK、OK、OKになるべきであったのだ。
そうして、動いた!と叫んだICが不良となるべきであった。問題の配線部分を調べてみると、
そこに欠陥があり配線がつながっていたのである。このような事は全く偶然の仕業であるが、
そのトリックを解明できてなんとなく浮き浮きした一瞬であった。マニュピュレータで切れたア
ルミ配線をつないで、動かないICが動くことを確認して最後のだめ押しも無事に済んだ。今で
は遠くなったが、ミクロの世界の仕事もやってきたのだなと感慨深い。