2009/6/18
水は方円の器に従う
覆水盆に戻らずということわざは少し馴染みがある。小中学校の頃、やや大人びた同級生
がいて「水は方円の器に従う」ということわざを得意そうに発表した。自分はその意味がさっ
ぱり分からなかった。ませた事を言うやつだと思った。しかし、そういう言葉も親や周囲の者
が言い聞かせればそれなりに理解できる年頃なのだろう。言葉も、聞いた程度、何とか理解
出来る程度、その意味を深く納得できる程度と色々なレベルがあるだろう。彼の雰囲気や言
うことがは大人びていたという事は彼の生活がそうさせていたのかもしれない。水は流体で
無定型である。エネルギーの低い方向に向かった流れてしまうが、その流れを阻止するもの
があるところで流れが止まる。器が方形であれば方形に円形であれば円形になる。これは物
理的な現象である。しかし、そこから教訓を引き出すのがことわざの神髄だ。物理的な因果
関係を人間の世界の因果関係と関係づける事は相当な理解力・想像力が必要になる。覆水
盆に戻らずとは体験的なエントロピー増大の法則のようでもある。しかし、人間の世界では覆
水も盆に戻ってしまうことも皆無ではないから事は複雑だ。「水は方円の器に従う」は物理世
界の真理、しかし、人間の世界では水のようになるがままに流されてはならないというのが別
な教訓か。水を民、器を為政者とみると為政者はその器の器たるを示さねばならないという
別の意味もあるようだ。為政者が水になっては民が器になっては民の立つ瀬がない。