2009/11/15
シリコンサイクル
景気に山と谷があるがそれを人為的に適正にコントロールする事にはまだ人類は成功して
いないようだ。朝鮮特需は、神武景気、岩戸景気、オリンピック景気、いざなぎ景気、列島改
造景気などと次々に起こった好景気の序章となったと言われるが、そのころ自分は小学生の
頃で好景気の有り難さを余り実感できなかった。特需のあった1950~1955年を振り返ると
確かにこの前半の生活では継ぎの当たった衣類を着た写真が残っているので生活が豊かで
ないことがはっきりしている。後半の生活では豊という実感は無かったがそこそこの生活がで
きていたのではないかと思う。オリンピック景気は、日本における1963年から1964年にかけ
ての好景気をいうらしいが、社会のムードは確かに明るい雰囲気があったように思う。オリン
ピックの招致が国力を反映していると考えれば、日本も国際的な一流国家になったという自
信が持てたのかも知れない。しかし、これも一過性のものであった。一方、半導体業界には
シリコンサイクルという好況が、オリンピックの開催年の四年毎に巡ってくると言われていた。
確かにそのような傾向が何年も続いた。従って、半導体の生産計画を立てるときはシリコン
サイクルの動向を見通して建てていた。当然、オリンピックは毎回開催国が変わるのである
から、半導体の需給がオリンピックに同期して世界的規模で変動した事を示していたと思わ
れる。即ち、当時の日本は世界の半導体需要をまかなう実力のある国であったと思われる。
しかし、半導体の生産能力を有する国が海外にも増加し、供給量が増大するとシリコンサイ
クルの重要性も余り言われなくなってしまったようだ。今日、21世紀の情報化社会を支えてい
るコンピュータ業界にほとんどのCPUを供給しているのがインテル一社になっているのも特
異な事実である。インテルの市場占有率が約80%、ライバルのAMDが約20%。結局アメリカ
勢がほぼ100%のシェアを押さえている。今日では半導体業界はシリコンサイクルとは無縁
になってしまったようだ。これは、一面では半導体の用途が非常に広くなり国際的な大型のイ
ベントに伴う需要さえも全体の需要の極一部に過ぎなくなったという事であろう。これは更に
経済の好況・不況の波の直撃を受けやすくなったという事でもあろう。