2009/12/31
炭焼きじいさん
幼少時の記憶に、小さな古墳のふもとにあばらやがあり長いあごひげのある老人が一人で
住んでいて、何か仙人のような感じがしたことがあった。その老人はいつとなくいなくなってい
た。ある機会に地域の昔話になって、そういえばあそこに炭焼きのじいさんがいたっけという
話が出てきた。終戦前後は、食糧難が続きあちこちで里山の開墾が行われたようだ。開墾で
切った樹木や掘った根をその炭焼きじいささんの所に持って行くと炭にしてくれる。じいさんは
焼いた炭の一部を手間賃としてもらいそれで生計をたてていたようだ。炭焼きに持ち込んだ
人が貰う炭の量はたいした量ではなかったらしい。しかし、雑木林もそれほどの面積はなく、
開墾で炭の原料がいつまでも出ることは無くなってしまったのでろう。確かに、自分が幼少の
頃はあちこちに雑木林が点在しており、そこにカブトムシやクワガタを捕りに行った記憶があ
る。その雑木林は今日は皆無である。あの仙人のようなおじいさんは実は炭焼きのじいさん
であった事を知ったのが自分が老境にさしかかった頃であった。今日の幼い子供達が自分
の事をあのじいさんは何をしているのだろうかと見る事があるのだろうか。平日は子供の姿
を余り見かけない。しかし、お祭りの御輿を放り出して、我が家のムクゲの木に集まるカブト
ムシを、おじさん捕って良いと聞きつつ、捕ることに興じる子供達を見ると、そのじいさんは相
好を崩すのである。どういう訳かムクゲにカブトムシが集まる事を子供達は知っているのであ
る。子供達にそれを教えられた。どうもムクゲはカブトムシが好む汁液を出すようだ。