2010/1/26
照明工学
電気工学の一部門に照明工学というのがあったように思う。電気学会から出版されていた教
科書であった。検索したら、<本書は教科書とし好評を博した「照明工学」をベースに,内
容,装丁などを一新し書下ろしたものである。>と「光技術と照明設計」という本がヒットした。
講義や内容に関してはすっかり忘れている。照明も突き詰めれば物理の光と同じ基礎を持
つので違和感は無かった。学生当時は、照明工学とは実務上無縁であろうと思っていた。し
かし、リモコン受光用集積回路の受光感度を測定する時に照明工学が必要になった。受光
感度は大まかにはリモコン送信機との距離で評価できるが、再現性良く測定するためにはト
レーサビリティを確保する必要がある。そこで問題になるのがやはり、計測の基本になる信
号源と信号の測定器である。電気に関してはほとんど不自由しないほど市販品がある。しか
し、光関係はそれほど需要が無いのか市販品の種類が少なかった。振り返ってみると、リモ
コン受光用集積回も一種のセンサーである。シリコンの光電変換作用を利用する。光の入力
は透明パッケージを通して行われる。一方、ホールICは磁気を検出する。こちらは磁気がパ
ッケージを透過するので特別な入力端子が無い。ともかく、電気的に外部とつながる端子は
両方とも電源、接地、出力の3つしかない究極的な形態のICであった。この、リモコン受光用
集積回路を開発するためには、受光素子、信号処理回路、透明パッケージ等の新技術に挑
戦する必要があった。そうして、ほぼ市場導入の見込みが立ってきて受光感度の正確な測
定という課題に直面したのであった。最近の操作を要する電子機器にはリモコンが使用され
る場合は多い。中にはリモコン操作を基本にして本体側の操作機能が限定されている機器
もある。従って、リモコン送受部分の生産数量は膨大になる。この市場を狙って新規参入を
企てて来たが、一種の標準品としての価格要求は厳しかった。加えて、後発品として先行品
以上の性能を要求された。種々の受光妨害に耐える能力もその一つであった。開発はあと
一息で完了し発売できるところまで進んだ。しかし、最後の最後の場面で開発を中止する事
にせざるを得なかった。その理由は、幾つも挙げられる。もはや結果論になるが、開発中止
はやむを得ない判断であったのかもしれない。一度でも、生産出荷してしまうと更に難しい問
題が延々と継続してその後始末にも膨大な負担がかかる恐れも多い。一方では後発互換品
の開発という開発の立場を十分理解していたかは反省の余地はあった。先行品が価格、性
能、品質、納期等で顧客に大きな不満が無い限り、後発品の採用を積極的に行う理由も無
いと思われる。自分を後発品を使う立場に置いて初めて理解できるようになる事もある。先
行品が二匹目のドジョウを寄せ付けないということは、そこまでに到る間の種々の蓄積の賜
なのかもしれない。