スペクトラム拡散

2010/1/13

スペクトラム拡散

理工系の現象は数学との相性が良いようだ。数式で理論が表せる場合が多い。ある意味で

数式を理解することが理論を理解する事にも通じる。その基礎の部分に応用数学と言う教科

があった。その中にフーリエ変換というのがあった。これは情報通信理論の基礎でもあった

ようだ。今日の技術では、音も映像も時系列のデータとして扱われる。このデータをフーリエ

変換すると周波数軸上のデータとなる。こういう時間と周波数という二つの側面から一つの信

をとらえる事ができる。こういう見方をすると、音声より映像が格段に大量の情報量をもつ事

が分かる。そうして、この大量な情報を高速、確実、信頼性を保ち処理する事が技術の大き

な課題となった。アマチュア無線でも最初は電信、次ぎにAM電話、次ぎにSSBと技術が進歩

してきた。SSBの交信をAMで受信するともがもがして判読しにくくなるが、専用の受信機を

用すると正常な音声が受信出来る。ところが、軍用等の分野では交信の内容が傍受されな

いようにする必要がある。そこで登場したのがスペクトラム拡散のようだ。信号をばらばらに

刻んでノイズばかりのような広い周波数帯域の中にばらまく。普通に聞けばノイズばかりで信

号を探し事すら不可能だ。受信する時はその逆を行えば良い。スペクトラム拡という技術は

人工衛星を使った宇宙通信等でも使われたようだ。自分は実務上ほとんどスペクトラム拡散

等とは関係が無かったが、スペクトルを操作することにより新しい技術が生まれることを実感

した。インターネットもネット網を飛び交うパケットは細切れの情報になって送られる。ともか

く細切れな情報が間違いなく元の情報に確実に復元できることは凄いことではある。ところ

が、高齢になるとつくづく物探しの苦労が多くなる。特に管理分担や趣味が違う家庭では、相

手の物がガラクタに見えてしまう。そんな現場の物探しは大変だ。現実の世界をデジカメ等で

バーチャルの世界に変換してそこで物探しをして現実の捜し物の場所を発見するような技術

はあるのだろうか。自分が技術者時代に普及した計測器にスペクトルアナライザーという一

種の受信機がある。時間軸では見分けることが不可能なような極微少な周波数成分の存在

場所とその大きさも表示する測定器である。チューナで問題になり、その特性を測定するの

に苦心惨憺した、混変調、相互変調等が容易に測定できるようになったので、高周波分の技

術開発には威力を発揮できた筈である。残念ながらスペクトルアナライザーが普及する頃に

はチューナー関係の仕事から離れていた。 2002年ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏

はマススペクトル(質量分析)の研究者だと聞いて何か親近感を抱いた。横軸にあるパラメー

タ値をとり、縦軸にそれが出現する強さ、数量、確率等を取ると乱雑な事象を整理して見る

事が出来る。こういうことは、初心の技術者はいやとなくやらされた事であろう。自分も、

VHF/UHFトランジスタのPGやNFのヒストグラムを描いて歩留まりを推定した。卒研ではソニ

ー製だったか、エサキダイオードの電圧-電流特性を測定して負性抵抗を示すラクダのコブ

を再確認した。そういえば、電圧-電流特性を簡単に測定できるカーブトレーサーという測定

器も良く使ったものだ。ともかく何事も見えないものを見えるようにする事は未知の分野に踏

み込む第一歩でもある。そこに発明も発見もある。凡人にも色々なチャンスが巡ってきてい

るのかも知れない。