読みかじりの記:高橋元吉詩集:いとしきもの。100920。

2010/9/20

読みかじりの記:高橋元吉詩集

昨日(9/19)の上毛新聞の三山春秋に煥乎堂(かんこどう)の事が書かれていた。旧煥乎堂店舗を設計した白井晟一の企画展を紹介する中で、高橋元吉と白井晟一の精神的なつながりを述べていた。その中で、煥乎堂は明治初期に創業した老舗で云々と紹介されており、9/19の我がブログ記事で高橋元吉を創業者と書いた事が誤りかもしれないと感づいた。幸い、手元に高橋元吉詩集全五巻があるので、高橋元吉年譜をあたってみた。書店経営者としては3代目と訂正する。全集と書いたのも詩集の誤りで訂正。その年譜は明治26年に高橋常蔵の二男として生まれるから始まっていた。

そこには、高橋元吉が自分の生誕を記した以下の詩があった。

「武家から商家になた家に
 一人の武士の娘が嫁いで
 今から丁度四十八年前のきょう
 五人目の子を生んだ
 二番目の男の子だ」

大正6年(元吉24才)初代常蔵の死後、同年兄清七が家督を相続し二代目となる。清七が昭和17年に亡くなり、同年元吉(49才)が三代目を継いで社長に就任した。没年は昭和40年(72才)。この年譜を読むと高橋元吉は煥乎堂の三代目の社長になる事より、詩人として生きる事を覚悟して半生を歩んでいたように思われる。当時は長子相続の時代で、家業の点では二男は身軽な立場にいる場合が多かったと思う。今年で没後45年、生誕117年である。この機会に、高橋元吉詩集第五巻(草裡Ⅱ)の最後に掲載されている無題の詩を以下に掲載する。

「なん十年といふ間
 この世の花をみてきた
 人が見ても見なくても
 咲きこぼれるとひらいて
 また消えてゆく花といふものを

 いかにものがなしげに
 過ぎてゆくものであるか
 時といふものは」

「この世の花」とはまさにいきとし生ける物の虚実を総称した象徴であろう。この世の全ての事象が時の中に生まれてかつ消えて行く。方丈記の人生観にも通じるようだが、自分はそいう事象を、自分の視点を通して見守り、<人が見ても見なくても>という句のなかに、事業家としてやるべきはやってきたという自負もみえるように感じる。一転して、最後の三行が詩人としての高橋元吉の心情の告白なのだろう。

高橋元吉の詩には上州の空っ風のような軽率な気風を感じない。詩は書店の仕事の合間に作ったようだ。その詩の中に高橋元吉の人生が投影されているのだろう。煥乎堂の経営という事業家として歩んだ人生がのしかかり、深海のように暗く重々しい何かがその詩の中を流れているように感じる。風で例えれば、一冬に一二回しか吹かない真夜中のごうごうと言う怖くなるような激風のようだ。それが音もなく詩の中を静かに吹き渡り、なかなか詩集を開く気にさせないのである。しかし、その鉛のような人生の重さを背負っていたから事業と詩作(文化事業)の両立が出来たのではないかと思った。

煥乎堂は群馬県に関する書籍を数多く出版してきた。自分も煥乎堂が出版した本を何冊か持っている。本の出版は煥乎堂の経営者としての高橋元吉の業績であり、地域文化への貢献であろう。年譜によると、一方では詩人として、文化人として中央の文化人との交流を元に群馬県の文化の振興に寄与している事が窺えた。残念だが、高橋元吉が詩人であると知る人はあっても、その詩業を知る人は少ないのではないか。しかし、最後まで詩人である事を止めず、詩人の精神を忘れなかった故に出版や白井晟一に依頼した旧店舗の設計等の文化的活動が出来たのではないか。

尚、煥乎堂に関しては以下のサイトを参照させて頂いた。今はない煥乎堂の旧店舗等が紹介されており、学生時代にお世話になった事を思い出した。クリックマークがあったので、クリックしたみたら、人気ランキングであった。271828の滑り台Logさんは:技術・工学の人気ランキングで3位であった。ご健闘に拍手。

参照サイト:

271828の滑り台Log
http://blog.goo.ne.jp/slide_271828/e/affb8132255a643818fe99699d0a661f

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追記(2014/4/21): 「高橋元吉詩集:いとしきもの(2010年9月20日 (月))」がランキング10位に入った。

関連記事として当サイト内の「煥乎堂」をGoogle検索。 サイト内でキーワード「煥乎堂」を検索(https://www.google.com/?hl=ja#hl=ja&q=%E7%85%A5%E4%B9%8E%E5%A0%82%E3%80%80site:http:%2F%2Faf06.kazelog.jp%2Fitoshikimono%2F)。

以下に昨年末頃撮影した煥乎堂玄関付近の画像を示す。

Iob_kankodougenkan_131102
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追記1(2014/8/1):「高橋元吉詩集:いとしきもの」の記事がランキング9位に入った。10位が「愛しき古里:萩原朔太郎が見た故郷の風景は?」で、両方群馬県の詩人なのは不思議な感じがする。最近関心度が高い楫取素彦顕彰碑と高橋元吉詩碑は同じ公園内にある。WIKIPEDIA「花燃ゆ。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E7%87%83%E3%82%86)」のコメントが面白い。曰く「この項目には放送開始前の番組に関する記述があります。Wikipediaはニュース速報でも宣伝サイトでもありません。方針に従い独自研究の予測などは載せず、出典に基づいて正確な記述を心がけてください。また、特に重要と思われることについてはウィキニュースへの投稿も検討してください。(2013年12月)」。「愛しき古里(PHOTO1:たまたま出会ったもの ):高橋元吉の詩碑(http://af06.kazelog.jp/itoshikimono/2012/09/photo1-1011.html)。(2012年9月 6日 (木))」。詩碑だけを見る:http://af06.kazelog.jp/photos/phot1/takahashi_motokichi_sihi_hontai.jpg。「09D2 初代群馬県令 楫取素彦 没後100年記念(2012年)(http://af06.kazelog.jp/itoshikimono/09d2_KATORI_MOTOHIKO_MEMORIAL.html)。」楫取素彦が建立した「御蔭松の碑」というのがある。サイト内でキーワード「御蔭松の碑」を検索(https://www.google.com/?hl=ja#hl=ja&q=%E5%BE%A1%E8%94%AD%E6%9D%BE%E3%81%AE%E7%A2%91%E3%80%80site:http:%2F%
2Faf06.kazelog.jp%2Fitoshikimono%2F
)。


追記2(2015/4/10):「高橋元吉詩集:いとしきもの」の記事がランキング10位に入った。煥乎堂といえば群馬の名門書店だったが、本が欲しい時は金が無い学生時代だった。それだけ、煥乎堂に並んでいた本が輝いていた。最近は、前橋に行く機会も少なくなった。先日は、ぶらり前橋散策をして、その最後の寄り先が煥乎堂だった。向かったのは三階の古本コーナー。ポイントカードをくれた。ほとんど来ないので断ろうとも考えたが、それを持っていれば、また来ようかと思うかも知れないと貰っておいた。「新ラジオ技術」(上下巻)があった。手元の下巻は昭和29年再版のものだ。その十数年後に、同じ本を購入して読んだ記憶がある。つい買ってしまったが、まだトランジスターは出て来ず、真空管だけを扱っている。理工学の専門書は高価で、神田の明倫館という古書店で買った事を思い出す。あの明倫館は吉田松陰とどんな関係があるのだろうか。

Googleでキーワード「明倫館 古書」を検索(https://www.google.co.jp/webhp?tab=ww#q=%E6%98%8E%E5%80%AB%E9%A4%A8+%E5%8F%A4%E6%9B%B8)。

追記(2018/07/30):タイトル文字を変更。日付を追加。アクセスランキング4位。

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追記(2019/10/29):思い付メモ

読みかじりの記:高橋元吉詩集:いとしきもの。100920。の記事が2019年10月29(火)のアクセスランキング5位に入った。以前かみさんと雑談していると高橋元吉の話が出てきた。どこかで聞いた名前だと言う事で話が一致した。その後、前女の校歌の歌詞を作っていると知った。文化と文明という切り口から我が古里群馬を見ると本当にお寒い限りだ。その点、群馬県の文化として前橋の煥乎堂は少しは自慢できる。忘れてしまうのが講談社の野間清治だ。野間清治も群馬師範の学生であった。このランキングを見て、野間清治は学生時代に煥乎堂に通ったかも知れないと思い付いた。そう考えると煥乎堂の高橋元吉と講談社の野間清治は全く無関係だとは言えないのかも知れないと思った。

「身辺雑記:田舎老人徒然草:文化と文明雑感:花燃ゆに出る明倫館と神田の古書店明倫館は関係あるのか?(http://af06.kazelog.jp/itoshikimono/2015/10/post-b82c.html)。(2015年10月26日 (月))」

「身辺雑記:田舎老人徒然草:炬燵で聞いた遠い遠い昔話(3):米じいさんの葬式;大砲の 音よりましな 落雪だ。1601。(http://af06.kazelog.jp/itoshikimono/2016/01/3-f712.html)。(2016年1月20日 (水))」

群馬県出身の有名人(https://yuumeijin.info/kenken.php?ken=%E7%BE%A4%E9%A6%AC%E7%9C%8C)

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以下は予定の本題

雑草句録:秋の空

■いやながら農薬をまく秋の空

農薬は主に病害虫の防除に使う。法律的には病害虫の防除に使う生物等も含まれるようだ。生物農薬と呼ばれる分類があり農薬取締法の対象になると言うことなのか。ところが、植物に寄生する虫や病気が100%有害なのか迷う。

最近、多剤耐性菌が問題になっている。細菌は生き残りをかけて自分の薬剤耐性の強化を遺伝しレベルで行っている。害虫も薬剤耐性を持つと使用できる薬剤が減るというので、同じ薬剤の連続投与を避けるように指導されているようだ。

生物多様性の重要性が叫ばれているが、細菌、微生物等自然の生態系の連鎖を農薬が断ち切り、失われたが気付かれない生物種が非常に多いのではないか。食物連鎖の頂点にたつ大鷹は話題になるが、足元の微生物は見過ごしてしまう。

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