読みかじりの記:(高山)彦九郎 歌と生涯(3)

2010/12/11

読みかじりの記:(高山)彦九郎 歌と生涯(3)

○「御所の荒廃を詠む」の章
■立ち出づる心も晴れてあかぎ山 風も来よとて木葉吹くらし
■白雲をふみ分け来ても赤城山 空より高く落つる瀧つ瀬

著者は「彦九郎の生涯は尊王一途で、余裕というものが全くない感じだが、その中で安永二年の赤城行、また同六年の三夜沢赤城神社参拝は多分に余裕があって、故郷の山を懐かしみ楽しんでいる風情がある。」と述べている。赤城神社参拝の時彦九郎は31才。高山彦九郎は18才の時家に書き置きを残して出奔し、京都に遊学したとの事だ。十三歳の時に太平記を読んで歴史の世界から現実の世界に関心が広がってきたように思われる。引用の二首は共に赤城山を詠んでいる。印象に残るのが二首に含まれる「も」という助詞。赤城山と詠者の心情との微妙な関係を詠いきっているように感じる。切れず離れず。著者の評釈の通り「余裕があって、故郷の山を懐かしみ楽しんでいる」ようだ。旅に明け暮れている彦九郎を古里の赤城山が暖かく迎え、無条件に抱擁してくれているように感じる。