会社生活断面記:オンリーワンという呪文と呪縛

2012年10月30日火曜日
昨日は晴れ。最大瞬間風速(m/s)(風向(16方位)) 16.5(北西) 10:57 。帽子が飛ばされる位のかなり強い西風が吹いた。ざっそう句:焼き芋を 食って仕事だ 胸焼けだ。シークァーサの不要枝を剪定。接ぎ木苗だが今年初めて結実。ビオラとキンセンカの苗をポットに移植。本葉2~3葉程度か。播種から1ヶ月余だが、マラソンと同じように、苗の育ちに差が出ている。苗が小さいときは葉が丸みをおびて、雑草の苗と区別が難しい。本葉2~3葉程度になるとようやく雑草と区別できる姿になる。個性の発現には遺伝的な要因が大きく作用するだろうが、時間をかけて歴史的に形成される環境も無視できない。新聞の集金員が苗箱を見て、これネギでしょうという。自分もネギの種を蒔いたとの事。これからどうすれば良いか聞かれてとまどった。こちらも初めて。枯れないように手入れをして冬越しさせ、春畑に植えるだけで、苗は弱いので子育てと同じでいいんじゃねんと言ってしまい、後でテレている。

2012年10月29日の天気(AMEDAS)

TAVE= 15.9
TMAX= 20.9 最高気温(℃) 21.1 13:46 
TMIN= 11.2 最低気温(℃) 10.9 23:55 
DIFF= 9.7
WMAX= 10.9 最大瞬間風速(m/s)(風向(16方位)) 16.5(北西) 10:57 
SUNS= 9.6
RAIN= 0


Q

会社生活断面記:オンリーワンという呪文と呪縛

現役時代を振り返ると、普通のサラリーマンは、何らかの能力を時間で切り売りしている職業のように感じた。女性の社会進出が盛んな頃は、総合職・一般職が注目を浴びた。何でもこなせるのが理想だが、広く浅くというのでは、役人の世界等を除くと、中途半端なのが現実だ。そこで、専門家やプロがもてはやされるが、その世界も必ずしも住み心地が良いとは限らない。

最近、日本の家電業界の元気がない。高度経済成長時代に3Cと呼ばれ、何とかして買おうとした、カー、カラーテレビ、クーラーも今では日用品となった。最初は、これらの製品も米国メーカーが作っていたが、日本が追いつき追い越した。そうして、現在は日本が追いつかれ、追い越されるかという厳しい状況に立たされている。工業製品は、一次産業と異なり、産地は動きやすい。

家電メーカーにとって、カラーテレビは看板商品。カラーテレビのキーデバイスといえば、昔はブラウン管だったが、現在は液晶かプラズマの平面表示装置がそのキーデバイスだ。自社にこのキーデバイスが無い場合は、外部調達という事になるが、ここで大きな差がついてしまう。その、キーデバイスである液晶パネルを内作して、液晶テレビで快進撃してきたのがシャープだろう。こつこつと積み上げてきた液晶技術の集大成とも言えるだろう。最近、シャープの経営が危機的状況になっているが、どこまで回復できるのか気になる。

テレビ用集積回路を担当して現役時代に、売り込みでシャープ矢板工場を訪問した事があった。シャープ資料によると、1968年(昭和43年)にカラーテレビ専門工場として操業を開始とある。自分が営業マンと同行したのは、ビデオが普及した1980年代だったと思う。商談は順調ではなかったが、腹蔵なく技術的な話をした事、技術者がまじめに対応してくれた事は記憶に残っている。工場は新しかったと記憶している。WEB情報によると、その矢板工場も経営再建のため縮小中だが、完全閉鎖は無いと伝えている。更に、担当が変わってから、シャープ奈良新庄工場とも関係があた。こちらには、オプトエレクトロニクス関係の工場があったと記憶している。シャープは優れたリモコン受光用デバイスを保有しており、他社を寄せ付けない程だった。かつては、シャープ以上の物を作れと尻を叩かれたがついに未達に終わった苦い経験があるだけ、シャープの技術へのこだわりを実感した。リモコンモジュールは小さな部品なので、単価は高くても二桁台だったろう。そのようなニッチな分野で地味な技術であるが市場を確実に掴んでいた。何しろ、高価なテレビでもリモコンが動かなければまともな操作もできないのだ。

それが、液晶パネルになれば、3~4桁台の単価になる。シャープが液晶テレビで快進撃をした背景には、ブラウン管テレビの生産を止め、全数液晶テレビにするという経営的な判断があったのであろう。ところが、液晶パネルの製造は集積回路と同じような装置産業としての側面を持つ。巨大な設備投資が必要になる。シャープのアニュアルレポートの設備投資の時系列動向を見るとある時期をピークに低下を始めている。今となり、シャープの経営理念「いたずらに規模のみを追わず、誠意と独自の技術をもって、広く世界の文化と福祉の向上に貢献する。」は、現実の企業運営の中でどうだったのかという事が気になった。

そこで、シャープのホームページに掲載されているアニュアルレポートの中のキーワード数を調査してみた。経営理念は、企業の運営の基本になる。一般的には、文書の冒頭部分に経営理念が出るのだが、データを見ると、それがある時から一歩後退しているようにも見える。規模の拡大に踏み込んだのか。シャープの経営理念の中の、「いたずらに規模のみを追わず」という部分に、シャープのDNAが盛り込まれているように思われるのだが。それが具体的にどんな事を意味しているかは別として、シャープマンは、歴史を通して、経営者も従業員もその意味する事を常々考えていたのではないか。それが、いつの間にか、オンリーワン=テレビ=液晶に変わってしまったのだろうか。自分から見ると、例えれば一個数十円に満たない、リモコンモジュールの中にこそ、シャープの経営理念が生きているように感じるのだ。経営者が経営理念を忘れては元も子もないが、従業員のほとんどはそれを忘れていないのではないか。シャープ従業員にとっては経営危機は想定外だったかもしれない。世間もそう思っていただろう。オンリーワンという悪夢の呪縛から解放されれば元の姿に戻れるのだろうか。ともかく、経営者がオンリーワン云々と言い出す時は要注意かもしれない。自画自賛、井の中の蛙から破綻へ向かう信号のように見えてしまう。語呂合わせのような、「ナンバーワンよりオンリーワン」という台詞も罪なものだ。シャープのアニュアルレポートannual_2004の第一ページは液晶カラーテレビの画像、第二ページに経営理念と経営信条が掲げられている。経営信条は「二意専心 誠意と創意」である。再起復活を願う。
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