灯火親しむ人の姿
2008/12/5
灯火親しむ人の姿
日が短くなると灯火が恋しくなる。ガス灯が明治初年頃、電灯が明治末から大正の初年頃に
使用され始めている。電灯が無い時の照明は、行灯やランプだったのだろう。行灯の燃料と
してはいわしから採った安価な魚油が広く使われていたようだ。煤の少ない菜種油は高価だ
たらしい。ともかく百年前はそういう時代であった。戦後の家電時代が到来する以前は電気と
言えば電灯の利用がほとんどであったろう。夕方になると各家庭に電灯の光がともってゆく。
そうして深夜になるに従って電灯の光が消えて行く。これが電気が大切であった時代の光景
であった。深夜になってもポツンと電灯が点いている窓辺を見ると、灯火親しむ人の姿が思
い浮かんでくる。きっと真剣に読書や勉強にいそしんでいるのではないかと思いを馳せ、他
山の石にしようと感じる。今日では灯火が余りにも軽いものになってしまっている。もう一度
灯火親しむ頃の感覚を取り戻したいものである。ある日のお茶時の雑談で伯母さん達が勉
強の時に使ったのはランプだったと聞いたよという話があった。ランプの火屋にたまった煤を
落とすと明るくなった。これも当時の子供の仕事であったらしい。