ペンシルロケット
2009/2/9
ペンシルロケット
糸川英夫博士が1955年3月に行った水平発射実験に使われたペンシルロケットは全長
230mmだったとの事である。博士はこの実験を逆転の発想と呼んだらしいが、確かに大型
が出来ないからやらないというより、小型でもやって見ようという積極的な発想が大切であろ
う。糸川博士は戦前は青年技術者として中島飛行機で戦闘機の設計に関与していた。戦後
にロケット開発に従事して日本の宇宙開発の父と呼ばれた。自分が博士を身近に感じるの
は、博士が公職を去り、組織工学研究所を設立してからの活動を通してであった。博士がヴ
ァイオリンを弾き、バレーを踊るだけでも我々の発想は追いつかなかった。組織工学は巨大
な目的を達成するための学問ではあるが、日本が最も不得意とする分野である。どうも、組
織が自分の論理で動き出して、真の目的をいつしか見失う。こういう現象が至る所に現れ
る。今日の人工衛星打ち上げ用の国産ロケットH2Aの全長は53m以上あり、ペンシルロケッ
トと比較すると250倍以上である。重量は山勘で数十万倍のオーダーを下らないのではなか
ろうか。ともかく、日本の宇宙開発は軍事と関係なく平和利用から始まっている。宇宙開発は
あらゆる面で個人をこえる国家プロジェクトであるが、平和利用の伝統は永久に守られてほ
い。