APL
2009/12/8
APL
会社でCADシミュレーションに使っていたのはIBMの大型コンピュータであった。プログラム
はSPICEと呼ばれていた。このコンピュータ本体もプログラム本体もユーザとしての自分にと
っては完全なブラックボックスであった。入力条件と計算条件を与えると答えを出してくれた。
ともかくコンピュータは現実にはあり得ない数値を与えても計算に矛盾が生じない限り結果を
出してくれる。電圧で100万ボルト等の条件を与えても矛盾が無ければ結果が出る。時には
気晴らしに、こういう想定外の数値を入れて、コンピュータがどんな回答を出してくれるかスリ
ルを楽しんだ事もあった。コンピュータが止まったり、CRTが爆発したりしたらどうしようかと
変な空想が脳裏を横切る。幸い何事もなく済んだ事ではあった。しかし、プログラムで「、.」
一つで大問題が起こった事も新聞の話題になった事実ではある。大型コンピュータの中に
APLというプログラムがインストールされていて、何か定型的な計算に使った記憶がある。コ
ンピュータシステム担当者が教えてくれたプログラムで余り本格的には使われなかったが、こ
れも気晴らし程度に使った事を思い出した。コンピュータシステム担当者も気晴らし程度に使
っていたようだ。しかし、大型コンピュータの前に座って電卓を叩く姿は滑稽であったが、それ
なりに意義があった。回答の想定値を知っていれば判断ミスを防げるのだ。最近コンピュー
タがらみの問題で生じた裁判の判決がでた。日経コンピュータの記事は以下の通り報じた:
「みずほ証券が株誤発注による損失など約415億円の賠償を求め東京証券取引所を訴えた
裁判で、東京地方裁判所は2009年12月4日、東証に107億1212万8508円の支払いを命じ
る判決を言い渡した。(大和田 尚孝=日経コンピュータ) [2009/12/04]」コンピュータシステ
ムでは、矛盾しない数値であれば、止まることもなく処理が進んでしまう。従って、想定外の
数値が入力されたならば、コンピュータ側が何らかのメッセージを出したり、処理を中断した
りするべきであったという教訓を判決が示したのであろう。責任割合は東証70%、みずほ
30%の事である。巨大なコンピュータが稼働している状態はまさにビジネスの実戦の現場で
あり、コンピュータは一時も止めたり、気晴らしで想定外の取引を試したりできないだろう。変
な操作をしてコンピュータがダウンでもしたら元も子もなくなる。とは言え、想定外を想定する
のが業務用基本ソフトの原則なのかも知れない。ヒマな時に想定外のシミュレーションをして
みるのも無意味ではなさそうだ。そんな馬鹿な事をするものではないというかげの声も聞こえ
てきそうであるが。一種のリスク管理シミュレーションで、防災訓練のように行う手法もあるだ
ろう。