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2010年9月 2日 (木)

書肆いいだやさん:いとしきもの

2010/9/2

書肆いいだやさん:いとしきもの

今年の夏の暑さは凄まじい。日本各地で猛暑日関係の新記録が続出している。そんなことを書いていると、昨日(9/1)の夜のTVニュースで気象庁は「今夏(2010年6月~8月)の日本の平均気温は、統計を開始した1898年以降の113年間で第1位(これまでの第1位は1994年)の高い記録となりました。」(気象庁ホームページ)と発表したと報じた。異常気象という言葉も発表画面に流れた。九月に入ったが、その勢いは上旬まで続きそうである。政界でも猛暑同様な熱き戦いがしばらく続きそうである。

一方、この8月は、書肆いいだやさんが店頭販売を終了したという地域の歴史にとっても記憶に残したい意義深い年にもなった。読みかじりであるが、江戸時代後期から明治にかけては伊勢崎は文化レベルが高かったようだ。これは、いいだやさん店主が身を以て確信していた事かもしれない。群馬の人口が200万人を割ったのと同じように、書肆いいだやさんの閉店が伊勢崎の文化レベルがまた一段と下がる兆候とならないようにと願うばかりである。

書肆いいだやさん訪問については2010/8/31の記事に書いた。日中は余りにも暑いので、仕事は何も手が着かない。つんどくのつもりであったが、ともかく扇風機をかけて、いいだやさんのレジ袋を開いて書名を確認しつつ少し拾い読みをした。その一冊に、「記憶のメカニズム」高木貞敬(さだゆき)/岩波新書があった。1976年5月20日第一刷発行とあり初版本であった(ちなみに定価は230円)。科学の進歩から言えばもう相当古そうな感じがするが記憶について体系的な勉強などしたことがないので大変新鮮に感じた。記憶も定義の仕方で色々なレベルがある。鮭が自分の生まれた川を記憶している事の研究などは面白かった。30年を一世代とすると、人間の記憶の一世代の間の研究の進歩がどれだけあったのか、素人には余りよく理解できないが、ともかく、人間の記憶は相当長い期間の情報の整合性を保つために絶対必要な機能のようだ。古い世代から新しい世代へ色々な記憶を引き継いで行くことが今後非常に重要になると思う。

レジ袋から何冊かの本を取り出すと、下の方からA4を二つ折りにした紙片が出てきた。いいだやさんでは初めての事だったので、何かと広げてみると何と店主(ごめんなさい本当は代表取締役さんのようです)のあいさつ状であった。レジの時にそれをひっそりと忍ばせてくれていたようだ。それを、じっくり読むと店主の気持ちがひしひしと伝わってきた。8/31の記事が自分のうろ覚えと主観だけに基づいているように感じ、それを補うため記事を追加する事にした。

あいさつで、一番感銘を受けた部分は「書肆いいだやの目指して参りました理念は、目で見て心を通して読むこと、それは過ぎた時代のかすかな声を聞き、書物をとおし未来へ橋渡しを志す精神です。」と書かれていたこと。そのキーワードと言えば「目で見て心を通して読むこと」、「過ぎた時代のかすかな声」、「書物をとおし未来へ橋渡しを志す精神」ということにになると思われる。ともかく、書物はそれに接する人にとって常に過去と未来の結節点にあるのだろうと思った。なかでも、「かすかな声」を捉えて聞き分ける事は何事にも大切である。現代は増幅された雑音・騒音に「かすかな声」がうち消されている時代でもあるので尚更だ。

当日、自分が購入した郷土歴史資料に数冊の地域の遺跡の発掘調査報告書がある。悲しいかな、これらの地域の遺跡は地域の土地開発のために破壊され、その代償として残されるのが遺跡の調査報告書のようでもある。遺跡そのものは消えて地域の人々もほとんどその存在を忘れてしまうのが現実だ。当局は相当な経費をかけて発掘調査や報告書の発行を行うが、読む人は極わずかなようだ。こういう分野に事業仕分けが行われたりすれば、貴重な文化事業は即死扱いになるだろう。現実にそのような傾向がじわりじわり進行しているようにも感じられる。

幸い県や市は、戦後の発掘調査の報告書の作成を継続してきているので、蓄積された情報は膨大な物になるだろう。その極一部にいいだやさんで遭遇できた。発掘の現場説明会に出かけたついでに現場職員に報告書のネット無料公開を頼んだこともあった。その声はどこまで届いただろうか。1TバイトのHDDが1万円を切る時代である。ネット公開を前提に報告書を作成すれば追加費用も多くを要さないと思う。ぜひ推進して貰いたい。自分が危惧しているのは蓄積された膨大な遺物、資料、情報が二次的な遺物になっていつしか分散・消滅してしまう事である。 一方、公開した場合の効果は計り知れない。それだけでも、当地の文化情報の発信になる。更に、その報告書を目にした児童・学生の一万人か十万人の一人でもその分野の専門家になるきっかけになれば、それだけでも十分ペイするのではないか。ともかく蓄積された物も単なる遺物の山で終わるのか研究者にも税金を払った市民にも金鉱になるのかの分岐点が公開であろう。

真夏の夢のような事を書いてしまったが、書物も遺跡も遺物も耳を澄ませば何かを必死に訴えているようにも感じる。しかし、モノそのものや情報が無くなってしまえばかけがえのない歴史を永久に失ってしまうのも事実である。かくて、現実の地域の歴史には多くのまた底知れぬブラックホールが満ちている。書肆いいだやさんにはそういう意味で郷土歴史資料から地域のかつての姿を思い起こさせる良い機会を与えていただいたことに改めて感謝している。

いいだやさんのあいさつ文に述べられた理念や創業の心意気は、同店の愛顧者等できるだけ多くの人々の記憶にぜひとどめておいて頂きたいと思ったが、事業範囲が広くそれをうまく要約できそうにもない。そこで、自分のポンコツパソコンで何とかならないか検討した結果、スキャナーであいさつ文の画像(JPG)を取込み、別のフリーソフトでPDFに変換できたので、あいさつ文全体を8/31の記事の言葉不足の修正と訂正(営業期間30年⇒35年に訂正)も兼ねて紹介させて頂きたいと思う。このあいさつ文はいいだやさん自身による35年間の事業の総括・記念碑でもあると思う。いいだやさんにあっては35年間の活動を通して地域文化の振興に大きな足跡を残された事に改めて敬意を表したいと思います。ありがとうございました。いつしか、いいだやさんが播いた種が芽を出し、いいだやさんの理念や創業の心意気を引き継ぐ人が現れればと期待したい。

尚、書肆いいだやのホームページ:http://www6.wind.ne.jp/iidaya/に記載されていない情報は個人情報としてPDFより消去させて頂きました。

いいだやさんのあいさつ文は以下↓をクリックして下さい。

iidaya_aisatsu.pdfをダウンロード

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  • 柳田充弘: 11_細胞から生命が見える
    著者の専門は分子生物学、細胞生物学。普段生物を考えても細胞レベルで止まってしまう。その細胞の中で色々な分子が働いている。細胞こそ生命の基礎だが、その細胞の中の動きを知るのに最適な一冊。疑問の発端はなぜ発根剤が効くのかということ。薬剤が細胞膜を通過して細胞内で分子と分子が作用するイメージができた。本書でできた細胞のイメージは小さな無数の穴が空いた水分が充満したヨーヨーのようなもの。そのヨーヨーの中に分子部品が詰まっている。細胞自体もタライの中のヨーヨーのように浮かんでいる。細胞図面の空白部は真空でなく水分だ。細胞の内外に水がないと細胞は生きられない。水が生命のゆりかごだ!
  • 野口悠紀雄: 10_ホームページにオフィスを作る(2001年 光文社)
    ITが輝いた時代の作品。HPの活用法は参考になる。参考:url=http://www.noguchi.co.jp/(野口悠紀雄 ONLINE)
  • 小池洋男 編著: 09_果樹の接ぎ木・さし木・とり木(農文協:2007/3/31第1刷)
    やや専門的であるが、実務専門化が分担執筆しており、その場で役に立つ一冊。
  • ノーバート・ウィーナー(鎮目恭夫訳): 08_サイバネティックスはいかにして生まれたか(みすず書房1956)
    情報と通信という現代社会に不可欠の基礎的な学問を作った著者の自伝とそれを通した科学史
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