読みかじりの記:シャープの謎 勝ち続ける日本力! 長田貴仁 著 (2004年 株式会社 プレジデント社)
2011/9/27
昨日は曇り。朝夕自転車巡回。秋の気配を感じる。相変わらず下草刈り。極早生ミカンの実が黄色くなり始めた。試食すると甘みは少ないが酸味は無かった。柿の実も色付き始めているので試食。渋さは抜けて少し甘みがあった。草退治してできた、小さなスペースに小松菜とビタミン菜の種を少しまいた。仕事はポケットラジオで国会中継を聞きながら。その最中に、陸山会事件の小沢氏元秘書3人に有罪判決が出たとニュースが流れた。デジカメデータをコンビニでプリント。カラープリンターを持っていないのでコンビニプリントは助かる。夜は会合。今朝の上毛新聞新聞記事は環境活動家のマータイさんの死亡を伝えた。71歳。日本は、欲呆けで「もったいない」という気持すら失ったってしまった。それに気付くのはもはや取り返しが出来なくなってからなのだろうか。ここ数日、鼻がむずむず、クシャミ多発。体調不順だ。
2011/9/26の天気
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読みかじりの記:シャープの謎 勝ち続ける日本力! 長田貴仁 著 (2004年 株式会社 プレジデント社)
本書のタイトルの上に「凡人が天才に勝つ仕事術」というキャッチフレーズがある。本書が出版されたから既に7年を経ている。この間の日本経済も大きく変わった。自分が本書を手にしたのは本書から仕事上のヒントを得ようとしている訳でもない。既に現役を退いているのだが、本書の出版時期が現役後半時期に重なり、もう一度シャープという会社を振り返って見たくなった。
一読して興味があったのは、冒頭の早川徳次の短い伝記。この伝記と共に創業の精神と世間から同族企業と見られない理由が分かる。「勝ち続ける日本力!」というキャッチコピーの中に、理想的な日本的経営を見ているのかもしれない。シャープの技術を見ると、日本で最初というのが意外に多いと感じた。早川徳次の企業理念を佐伯社長が「誠意と創意」にまとめたらしい。現在シャープのホームページに経営理念が掲げられ、「いたずらに規模のみを追わず、誠意と独自技術をもって、~」と創業以来のDNAを伝えているようだ。液晶パネル、太陽電池、電子デバイス等の基本デバイスを内作する事により、技術や製品を長期的な視点から育成してきた事が今日の発展につながっているのだろう。真似られる技術から真似られない技術へ、言い換えれば技術のブラックボックス化を進めている事にも興味がある。
WIKIPEDIAによれば、「MZ(エムゼット)は1970年代から1980年代にかけてシャープが販売していたパソコンのシリーズ名。当時はシャープは日本におけるパソコン御三家の1つに数えられていた。」とある。このパソコンは8bitのZ80CPUを採用。またシャープにはX86000というパソコンもあったはず。IBM PCではメビウスを販売。本書にあるように、パソコンはパソコン関連事業展開が主目的で、「いたずらに規模のみを追わず」というブレーキが利いてた事業のようだ。すでに、十数年前の事だが、シャープの幾つかの事業部門へ半導体の拡販で訪問した経験がある。セールス担当の話では、社員は仕事は熱心にやると言っていた。コストは厳しいとも。そういう意味では事業の基本は末端まで届いていたのではないかと思う。オプト電子部品ではリモコン関係のシェアは相当高かったと思う。
シャープはホームページで、「「オンリーワン液晶ディスプレイでユビキタス社会に貢献する」;url=http://www.sharp.co.jp/corporate/eco/special/closeup/index2.html」というタイトルで、「一方、1973年、世界で初めて液晶ディスプレイをポケット電卓に搭載してからは、ひたすら液晶の進化を追求し続け、ブラウン管が全盛だった1998年、「2005年までに、国内で販売するすべてのテレビをブラウン管から液晶に変える」と宣言しました。」と報じた。
これは本書でも度々述べられている。このシャープの宣言により、日本のテレビの液晶化が進んだのも事実であろう。そうして、液晶テレビは景気底上げのエコポイント対象商品になり売り上げを伸ばし、2011年のアナログTV放送の完全地デジ化により特需を迎えた。
産経新聞は、「液晶テレビの採算悪化 シャープ、復活へ次の“お家芸”探す (1/3ページ);url=(2011.7.20 05:00)」というタイトルで、「シャープが主力の液晶事業で苦戦している。韓国や台湾勢などとの過当競争で採算が悪化し、同事業の2010年度の営業利益は3年前に比べ5分の1にまで縮小した。業績を牽引(けんいん)してきた“お家芸”ともいえる事業も、自前主義を捨てざるを得ないところまで追い込まれた。復活に向けて次なる成長戦略が急務となっている。」と報じた。
シャープの液晶テレビの採算悪化は台湾、韓国メーカーの参入で競争が激化して単価が下がったのが原因。今日では、海外メーカーが実力を付け、有望な市場へ高性能より低価格を武器に参入してくる。国内販売をメインにしていたシャープにも意外な盲点があったようだ。映像機器は家電の花形商品だがそこから利益を出す体質を作るのは大変なようだ。かつてブラウン管を内作していない家電メーカーは内作メーカーが羨望の的であった。映像機器という花形家電のキーパーツを自社調達出来れば鬼に金棒となる。シャープは製造業にこだわる。日本のメーカーも多角化であれこれ手を出したが、結局製造業回帰現象が見られる。しかし、半導体、液晶等は装置産業でもあり、巨額の資金が必要だ。労働集約的なアセンブリー産業は新興国の方が向いている面が多い。今日パソコンのマザーボードをを内作している日本メーカーが何社あるだろうか。OEM等が多いのではないだろうか。今シャープが直面している課題は日本が抱えている課題でもあろう。シャープの経営が堅実であっただけ、それが表に出るののが遅かっただけかもしれない。
本書ではソフト事業についての記述が少なかったように感じる。日本は物作り、ハードは得意だという自負心があるが、ソフトを敬遠し過ぎていないか。何をビジネスの糧ににするのか。身体を使う以上に頭を使わないと新興国からも置き去られてしまう心配がある。在職中はシンガポールの設計会社と設計委託の交渉をした事があった。その会社のCEOは確かインド人ではなかったかと思う。技術レベルは判断できなかったが、最先端までは行かなくても、当時としては日本からの設計受託が可能なレベルだったようだ。CAD等の設計ツールだけでビジネスを行うので、その身軽さとしたたかさには感心した。設計の委託・受託はサービス業そのもので、その全体をカバーするにはソフト技術が不可欠だ。技術や特許すらビジネスの対象になるのが現代だ。ソフトビジネスは日本の技術にとっても宝の山ではないか。そこに宝の山があることをに先ず気づかなければならない。 これからが日本の技術の実力を示す本番になるのではないか。それが出来なければ、日本の技術は落日を迎えるのみだろう。