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2008年10月19日 (日)

荘子と混沌

2008/10/19

荘子と混沌

日本で初めてのノーベル賞を受賞された湯川秀樹博士が中国思想である荘子に親しんでい

た事は広く知られている。荘子の思想が自由な発想を触発させる内容に富んでいたからであ

ろう。湯川秀樹著作集の読書に関する一冊を読んでみた。博士は荘子の混沌の話を素粒子

論の発想と対比して語っていた。物理の基礎理論の混沌と荘子の中の混沌を対応させつつ

混沌の中から中間子理論を導いた事を語っているのではないかと思った。そうして博士の究

極の目的とした素領域の理論も視野に入れて荘子の混沌を語ったようでもある。

時間と空間という入れ物は決まっていても、それを舞台にして演じる役者は本当に大勢い

る。偉大な音楽や偉大な彫刻などもその例だろう。天才がそれをつむぎだす。

それなら、その役者の正体は何か。湯川博士は素粒子の種類が多く成りすぎて、それをうま

く整理できない状態を混沌という状態に見立てたようだ。多くの素粒子を生み出す更に基本

的で究極的な粒子の存在を想定した。それが「クォーク」という基本粒子であり、陽子や中性

子、中間子などの粒子はすべて、クォークの組み合わせでできていると考えられるようになっ

た。本年のノーベル物理学賞の小林・益川理論は湯川博士の研究の流れの中にあったとい

えるようだ。物理の世界にも実際の世界にも常に混沌がつきまとっている。その混沌の根本

をつかむことは永遠の課題かも知れない。しかし、混沌に真正面から向かわない限り混沌の

本当の姿さえ見えないのも事実であろう。混沌とは物事が生まれ育ち始める原点のようなも

のかも知れない。湯川博士にとって荘子とは自由なアイデアを見つけ、育む場であったよう

だ。

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追記(2014/6/7):「荘子と混沌(2008年10月19日 (日))。」の記事がいきなりランキング7位に入った。アクセスログは無いので何人この記事にアクセスしたのか不明だ。ともかく最低数人の読者がいるのだろう。物事、数字で知ってしまうと興ざめする事が色々ある。数年前の、自分でも忘れかけた記事を読んでくれる読者がいるだけでもありがたい。思うに、終戦直後に湯川秀樹博士がノーベル賞を受賞した事は、自信を失っていた多くの国民に元気を与えてくれたと思う。特に、当時の青少年が受けた感化も多大だったと思う。残念だが、当今の理化学研究所とそれを取り巻くSTAP細胞論文問題は、まさに混沌状態にある。それも、自然観に関わる深遠な混沌で無く、下世話・世俗的な混沌だ。現代の青少年達が科学に対してどんな夢が持てるのか。

サイト内でキーワード「科学ニュースに独り言」を検索(https://www.google.com/?hl=ja#hl=ja&q=%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%81%AB%E7%8B%AC%E3%82%8A%E8%A8%80%E3%80%80site:http:%2F%2Faf06.kazelog.jp%2Fitoshikimono%2F)。

追記(2014/6/9):
上記記事がランキング2位に入った。なぜ急上昇したのか不明。Googleで以下のキーワードを検索して当BLOGのヒット状況を調べた。「湯川秀樹博士と混沌」というイメージはまだ健在なのかもしれない。

混沌 湯川:24/約 29,500
混沌 湯川 理化学研究所:69/約 12,200(当BLOG記事)
混沌 理化学研究所:100位以下/約 22,000
湯川 理化学研究所:100位以下/約 36,400
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    著者の専門は分子生物学、細胞生物学。普段生物を考えても細胞レベルで止まってしまう。その細胞の中で色々な分子が働いている。細胞こそ生命の基礎だが、その細胞の中の動きを知るのに最適な一冊。疑問の発端はなぜ発根剤が効くのかということ。薬剤が細胞膜を通過して細胞内で分子と分子が作用するイメージができた。本書でできた細胞のイメージは小さな無数の穴が空いた水分が充満したヨーヨーのようなもの。そのヨーヨーの中に分子部品が詰まっている。細胞自体もタライの中のヨーヨーのように浮かんでいる。細胞図面の空白部は真空でなく水分だ。細胞の内外に水がないと細胞は生きられない。水が生命のゆりかごだ!
  • 野口悠紀雄: 10_ホームページにオフィスを作る(2001年 光文社)
    ITが輝いた時代の作品。HPの活用法は参考になる。参考:url=http://www.noguchi.co.jp/(野口悠紀雄 ONLINE)
  • 小池洋男 編著: 09_果樹の接ぎ木・さし木・とり木(農文協:2007/3/31第1刷)
    やや専門的であるが、実務専門化が分担執筆しており、その場で役に立つ一冊。
  • ノーバート・ウィーナー(鎮目恭夫訳): 08_サイバネティックスはいかにして生まれたか(みすず書房1956)
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