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2013年1月15日

2013年1月15日 (火)

読みかじりの記:防災意識にあふれた中谷宇吉郎の著作を青空文庫で読む。20130115。

2013年1月15日火曜日
昨日は雪。一時強風が吹いた。最高気温(℃) 6.5 04:18。最大瞬間風速(m/s)(風向(16方位)) 18.3(北西) 19:34 。ざっそう句:初雪だ コンコンと来る 別世界。宅内閑居。デジカメ予備機の動作確認。大型低気圧の北上で広範囲で天気が荒れたようだ。成人式は繰り上げて13日開催が多かったので幸運だったろう。雪国文化を代表する作品に鈴木牧之著「北越雪譜」がある。鈴木牧之は地域興しの原点にもなっているようだ。鈴木牧之記念館の一隅に句碑と言うより句標のような物があり、「そっと置くものに音あり夜の雪」(牧之)と記されていたのを思い出す。硯の墨が凍るような雪の降る深夜に、学問という夜なべをしていたのではないかと想像する。

2013年1月14日の天気(AMEDAS)

TAVE= 3.5  
TMAX= 6.3 最高気温(℃) 6.5 04:18 
TMIN= 0.5 最低気温(℃) 0.4 10:57 
DIFF= 5.8  
WMAX= 7.9 最大瞬間風速(m/s)(風向(16方位)) 18.3(北西) 19:34 
SUNS= 0  
RAIN= 28  

Q
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読みかじりの記:防災意識にあふれた中谷宇吉郎の著作を青空文庫で読む

「北越雪譜」という本の名前は聞いたことがあるが、その著者が鈴木牧之という人物であると知る人は少ないのではないか。「雪の結晶のスケッチ」をするにも、肉眼だけでなく虫眼鏡も使っていたとの事で、対象に迫ろうとする気迫を感じる。江戸後期に虫眼鏡を手に入れるのも大変だったろう。

鈴木牧之記念館ホームページに、「よみがえる北越雪譜の世界。http://park11.wakwak.com/~imahaku/sub/bokushi/bokushi.html。」というタイトルで、「『北越雪譜』の著者、鈴木牧之(すずきぼくし)は明和7年(1770)塩沢に生れました。幼名:弥太郎、元服後:儀三治牧之の家は、代々縮みの仲買商を稼業とし、父の影響を受け幼い頃から学問や文芸の道に励みました。 牧之の交友は広く、作家では山東京伝や弟の山東京山、十返舎一九、滝沢馬琴など、その他、画家や書家、俳人、役者など200人余りにのぼっています。 学問や文芸にたけ几帳面であった牧之が遺した資料から、当時の文人や画家などの様子を知ることができます。」とある。

「北越雪譜。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%97%E8%B6%8A%E9%9B%AA%E8%AD%9C#.E5.87.BA.E7.89.88.E3.81.BE.E3.81.A7.E3.81.AE.E7.B5.8C.E7.B7.AF。(最終更新 2012年12月23日 (日) 10:00 )」『ウィキペディア日本語版』(http://ja.wikipedia.org/)。の記事に、「北越雪譜(ほくえつせっぷ)は、江戸後期における越後魚沼の雪国の生活を活写した書籍。初編3巻、二編4巻の計2編7巻。雪の結晶のスケッチから雪国の風俗・暮らし・方言・産業・奇譚まで雪国の諸相が、豊富な挿絵も交えて多角的かつ詳細に記されており、雪国百科事典ともいうべき資料的価値を持つ。著者は、魚沼郡塩沢で縮仲買商・質屋を営んだ鈴木牧之。1837年(天保8)に江戸で出版されると当時のベストセラーとなった。」とある。

「松岡正剛の千夜千冊(http://1000ya.isis.ne.jp/0001.html)」の第一話が、「雪 中谷宇吉郎 著」である。千夜千冊の第一番にこの本を持ってきただけに、色々な事を教えてくれる。一種の自伝でもあり、長い人生を経ることにより、新しく見えてくる物もあるようだ。ここまで、書いてあれ、同じ事を考えているのかと思った。松岡氏によれば「雪」の中に中谷宇吉郎の人生に向かう態度を見ているようだ。

幸いなことに、現在では「雪 中谷宇吉郎 著(http://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/52468_49669.html)」を青空文庫で読める。自分としては、本書の背景を語る「序」と「第一 雪と人生」の部分に関心を持った。雪が少ない地方に住む人には、想像もできない苦労と損害を受容しつつ生活しなければならないのである。科学的に雪の素性を解明できれば、雪害対策の手段も明らかになるだろうが、即効性は少ないだろう。科学と言えども現実の生活を支える知恵と労力とのバランスが必要になるだろう。著者は「北海道における研究の外に、この数年来、私は新庄(しんじょう)にある農林省の積雪地方農村経済調査所の仕事に少しばかり関係が出来て、其処(そこ)で雪害の実状を見聞している中(うち)に、雪と人生との間の深い交渉に驚かされたのである。そして色々気の付いたことを第一話「雪と人生」の中に述べることにした。しかしこの方は結晶の話とちがって私の本当の専門ではないので、大抵は受売りの話である。」と謙遜して書いているが、科学者として雪害対策の調査研究をしている事を語っていると思う。

『第二 「雪の結晶」雑話』、『第三 北海道における雪の研究の話』、『第四 雪を作る話』が本題であるが、読みかじりをパスして「附記」を読んだ。

そこに、著者は、「それから雪の正体を的確に掴むためには、どうしてもその生成条件を知る必要があるために、人工で雪華を作り、そしてその生成の条件を知ろうとしたのである。雪の出来る条件は、私が今まで述べただけで定まるものではないと思うし、また例えば説明もいまだ十分尽したとはいえない。しかし読者は自然科学の研究というものが大体、どんなものであるかということを理解して下さればよいのである。」と書いている。今日的に言えば、「人工で雪華を作る」ということは、シミュレーションにも通じるだろう。福島原発事故では、スピーディ(SPEEDI)による放射性物質の飛散予測が行われたが、それが被災対策に生かされなかった。

更に著者は、「しかし、自然の色々な現象の正体を究めようとする人にとっては、雪という我国にとって重大な意義をもつ自然現象の一つを、過去何千年かの間の人々と同じような見方で、何時(いつ)までも見ていることは余り望ましいことではない。もっとも誰もが雪の研究の専門家になっては困るということはいうまでもない。しかしわれわれが日常眼前に普通に見る事象の悉(ことごと)くが、究めれば必ず深く尋ねるに値するものであり、究めて初めてそのものを十分に利用することも出来、またもし災害を与えるものであればその災害を防ぐことも出来るのである。それ故に出来るだけ多くの人が、まず自分の周囲に起っている自然現象に関心を持ち、そしてそこから一歩でもその真実の姿を見るために努力をすることは無益な事ではない。すべての事柄について一般的の知識の向上は、必ず後日そこから優れた成果が出て来る土台となるものである。このことは繰返し言ってよいことであろう。」と書いている。著者が本書を出版した背景に、科学の防災への活用という明確な意図があったと分かるだろう。

著者は、「附記 第十一刷に際して」で、「人工雪の研究は、この書に述べたところは、ほんの初期の研究結果だけである。この十年の間に、主として花島政人博士の手によって、人工雪の研究は、著しい進歩をした。現在では、全種類の結晶型が、再現可能の状態で、容易に製作されるようになった。結晶形と外界の気象条件との関係という、一番困難な問題も、一応の解決を見た。
 それでは、雪の結晶の人工製作という大問題も、一応片付いたかというに、まだそうとは言い切れない。というのは、本書の読者が既に知られたように、私たちは、兎の毛の一点上に、極微の氷晶を作り、その氷晶から、雪の結晶を発達させている。その点は、現在でも十年前の方法をそのまま用いている。それでわれわれは、雪の結晶の最初期の状態、いわば雪の起源については、まだ何も言うことが出来ない状態にある。 ところが、この数年来、その方面の研究が、主としてアメリカで急激に進歩した。それはGEの研究所で、ラングミュア博士とシェファー博士とが、この氷晶を人工的に作る研究に成功したからである。冬の空にある雨雲は、もちろん零度以下にあるが、ほとんど全部過冷却の微水滴から成っている。この過冷却の水滴群の中に、ドライアイスの粒をまくと、水滴が氷晶にかわることを発見した。また沃化銀の非常に細(こまか)い粒子を添加してやっても、やはり氷晶が得られることが分った。 理論は略するが、これで氷晶の成因は一応分った。このアメリカでの近年の研究と、私たちの実験とを併せると、雪の結晶の人工製作の問題が、初めて首尾一貫して解けたことになる。」と書いている。あらゆる形状の人工雪を作ることにより、自然の雪がどのようにして出来るかという謎が解明され、さらなる謎の解明に進んでいる事が述べられている。

現役時代は、集積回路の設計でCADというツールを使った。これも一種のシミュレーションである。今日のスーパーコンピュータ「京」もその延長上にあるだろう。ただし、著者が行ったシミュレーションは、人工的に本物の雪の類似物を作るというハードウェアシミュレーションであるが、ソフトェアシミュレーションとも発想は同じである。

さらに、中谷宇吉郎の著作に「天災は忘れた頃来る(http://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/53217_49675.html)」がある。「天災は忘れた頃来る」という言葉は、寺田寅彦が語った言葉とされるが、それを証明する書物はないと本書で書いている。ただ、「天災は忘れた頃来る」という言葉自体は、寺田寅彦のものだと述べている。著者中谷宇吉郎が防災に強い関心を抱いていた事を示す書物であろう。中谷宇吉郎は、寺田寅彦の陰になっているが、防災意識にあふれた科学者だったと思う。小さな発見だ。

************************
追記(2020/05/11):この記事がランキング2位に初めて入った。外部アクセスだろう。読者に感謝。タイトルに投稿日を付記。雪の季節でも無いので、新型コロナウイルス感染症・COVID-19大流行の影響か。新型コロナウイルスは一部人造説もあるが、野性の鳥獣の中に自然に存在するウイルスが突然変異した可能性が大きいと思われる。多分、このようなウイルスの宿主は抗体を持ちウイルスと共生できているのかも知れない。野性ウイルスが原因なら、一種の自然災害で不可抗力と考えられるが、国や地方自治体が対応を誤れば人災にもなり得るだろう。

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  • 中村三夫: 13_NHK趣味の園芸:作業12ヶ月  カキ(NHK出版1996年)
    初心者向け柿栽培参考書(旧版)。新版と比較すると楽しい。
  • 山科正平: 12_細胞を読む   電子顕微鏡で見る生命の姿
    細胞はどんな部品からできているのか。そんな疑問に答えてくれる一冊。何事も形を見るのが第一歩。μからÅオーダーの世界で、細胞をメスで解剖するように、電子顕微鏡というメスで解剖して見せてくれるので興味が尽きない。
  • 柳田充弘: 11_細胞から生命が見える
    著者の専門は分子生物学、細胞生物学。普段生物を考えても細胞レベルで止まってしまう。その細胞の中で色々な分子が働いている。細胞こそ生命の基礎だが、その細胞の中の動きを知るのに最適な一冊。疑問の発端はなぜ発根剤が効くのかということ。薬剤が細胞膜を通過して細胞内で分子と分子が作用するイメージができた。本書でできた細胞のイメージは小さな無数の穴が空いた水分が充満したヨーヨーのようなもの。そのヨーヨーの中に分子部品が詰まっている。細胞自体もタライの中のヨーヨーのように浮かんでいる。細胞図面の空白部は真空でなく水分だ。細胞の内外に水がないと細胞は生きられない。水が生命のゆりかごだ!
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