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2010年1月

2010年1月21日 (木)

特許の回避

2010/1/21

特許の回避

ある事を実現するためには一般的にいくつかの方法があるようだ。その方法はただ一つしか

ないと証明することも困難であり、現実的でもない。ある山の頂上に登るコースに例えられる

と思う。登山ならば新しいコースで目的を達成するのは一つのチャレンジであろう。逆に特許

の場合は、利便性、経済性が大きな目的になる。新製品を開発する場合、第三者の知的財

産権を侵害せずに目的を達成できれば、それがベストと言える。しかし、開発した結果が生

きるためは、タイミングが合わなければならない。第三者の知的財産権を使わざるを得ない

事もある。大抵、大企業はお互いに自社の持つ特許を融通し会う契約を結んでいるようだ。

お互いに使い合った特許使用料の差額が特許収支となる。知的財産権に関して友好的な関

係にあれば合理的経済性の範囲で問題解決が可能なようであった。一方では、その逆の特

許ビジネスを専門にする事業者もいるようで、知財関係者から警戒されている場合もあった

ようだ。いずれにせよ、新製品を開発する場合、第三者の知的財産権を侵害しないこと、第

三者の特許を回避する別の手段を採用すること等が必要になる。既に市場に類似の製品が

存在する場合はそれを調査する。集積回路の場合はチップのレイアウトや回路が知的財産

権の対象になるので、その調査は大変である。そのような調査はリバースエンジニアリングと

呼ばれているが、適当な日本語を知らない。リバースエンジニアリングは単に産業上の技術

概念なのであろうか。権利という概念は完全に相対的概念であり、社会の中で生み出されて

きたのであろう。従って、権利の独占もあくまでも社会が許容できる範囲に限定されるのは明

かだろう。発明も発見も社会が積み上げてきた知識やインフラがあって初めて可能になる。

社会という巨人の肩に乗った小人が巨人の如く振る舞うのに違和感を覚えたのも事実であっ

た。リバースエンジニアリングも人間の創作物に到るまでの技術の適用を復元する復元技術

と定義すれば、それは技術における巨人の部分に相当するのではないか。新しい発明・発見

を矮小視する積もりはないはが、リバースエンジニアリングは公開されない優れた先人の思

考、発想、適用した技術等を探る正当かつ有意義な技術行為なのではないか。古代の遺跡

から出土する翡翠の首飾りはどのように加工したのか不思議に思った事がある。固い原石

に糸がようやく通る程度の小さな穴を開けるのは現在でも素人には難しい。その解決法を読

んで納得した。その技術は現代でも通用する。嶋正利の「我が青春の4004」を読んで、チッ

プパターンに家紋を残していると知った。これも、技術者として何かメッセージを残したいとい

う気持ちがあったのではないか。顕微鏡写真を何枚も張り合わせたチップ写真を眺め、そこ

から回路を抽出する時に何かその作品を完成させた技術者と向き合い対話しているような

気持ちになった事もあった。中には何のためにあるのか理解できない部分もあった。配線さ

れずに埋もれている捨て石のような部品もあった。これは万一の場合の保険でもある。捨て

石や部品の組み直しで助かった事もある。回路にもパターンにも芸術的な美しさを感じるも

のがある。技術者のセンスを感じる。一般の人に見せたいと思うこともあった。画生が偉大な

画家の作品の模写をするのも同じ様なことかも知れない。技術者現役時代は特許を避ける

という事を単なるコストの面でしかみていなかったようだ。第三者の特許を避けるという事に

は、結果的には先人の真似をしない、先人を乗り越えるというプライドややり甲斐という自己

主張という側面もあったようだ。

2010年1月20日 (水)

従来の技術

2010/1/20

従来の技術

特許の出願に際しては下書きは自分で行った。しかし、その書式・構成等はすっかりわすれ

てしまった。特許電子図書館の書式は以下の項目からなっていた。

●(書誌+要約+請求の範囲+実施例)
書誌 要約 請求の範囲 詳細な説明 利用分野 従来の技術 効果 課題
手段 実施例 図の説明 図面

何か実験ノートの項目のようでもある。確か、会社でも技術者用の専用ノートを用意していた

ような記憶がある。米国流の特許対策という一面があったかもしれない。発明の先行性を証

明する為にはあるルールで継続的に作成・記録した資料の方が証拠能力が高いという事で

あろう。しかし、技術者のノートは技術者の脳裏も暴いてしまう可能性もある。落書き、殴り書

きは常のこと。誰か他人が見るとなると自己規制が働き、ノートを書くことが仕事になってしま

うような気がして普通の市販ノート一冊で全てをまかなった。従って、当座の備忘録で終わっ

ていた。特許出願も見方によれば、その出願内容が科学・技術の独自性・新規性・有用性を

主張して、発明者にその技術の独占使用権の許可を求めるものであろう。山中 伸弥氏の特

許出願には六名の弁理士が名を連ねていた。水も漏らさぬ体制で出願に臨んだのであろ

う。ともかく、技術者が挑戦するのは新規分野の開拓、新しい独自の技術等である。従来技

術では実現できなかった課題を解決する手段を提供することである。特許の出願はある意

味では他人が出来なかった事を自分が実現したという自己主張も含まれるように感じる。そ

のような努力の結果が特許として正当かつ有用であることが認められることにより、その努

力の対価として独占的な権利が許可されるのであろう。半導体の世界では死屍累々と色々

なデバイスが生まれて消えていったというような文を読んだ記憶がある。平成5年以降の特

許電子図書館での検索ヒット件数:「半導体デバイス」に関する技術が 10102件 見つかりま

した。半導体の普及の初期には技術進歩も早く、「半導体デバイス」の発明件数は膨大にな

るのではないか。残念ながらそれを検索するノウハウが無い。コンピュータで全ての特許文

献をバリバリかみ砕いて特許制度開始までの情報をキーワード検索出来るようにして頂くと

技術の価値や歴史を探る福音になるかも知れない。

2010年1月19日 (火)

ばからしい特許

2010/1/19

ばからしい特許

唯一特許に関する洋書を購読した記憶がある。洋書と言えば、東京の丸善や紀伊国屋に行

って立ち読みするのが楽しかった。しかし、新本を買うゆとりはなかった。そこで、洋書の技

術書は神田の明倫館書店で古本を買うことにしていた。洋書のカタログが手にはいると、安

価な本を選んで米国から通販で取り寄せたこともあった。DOVER とかMITプレスはペーパー

バックの科学・技術書を出版していた。日本の大学出版部等は売れないことを前提にしてい

るのか、ソフトカバーの本が少ないように思われる。古くても価値のある書物は、紙質を落と

しソフトカバーにしても、書店に並べる価値があるのではないか。 確か、洋書の輸入には関

税もかからず、何冊かまとめて購入すれば洋書店で買うより安くついた。そこで、タイトルに

釣られて買ったのが、うすうす覚えていた題名の "Absolutely Mad Patents"。ともかく、特許

登録された、奇抜で、あきれて、ばからしい特許に関して書かれた本であった。そこでネット

検(WEB全体)してみたら正式書名は "Absolutely Mad Inventions". であった。Patentsは特

許でInventionsは発明で共通点はあるが意味が異なる。要約は以下の通りであった。

Alford Eugene Brown, Harry Allen Jeffcott著 - 1970 - Humor - 125 ページ
Hilarious but real inventions including edible tie pin, automatically tipping hat, metal locket for storing chewed gum ? all patented

ところが、「Absolutely mad inventions - Google ブック検索結果」でその本が出てきたのでび

っくりした。現在もこの本の改題版がDOVERからでているようだ。ページをめくると記憶のあ

る画像が現れた。一般人からみれば、奇抜で、あきれて、ばからしい特許かもしれないが、

発明した本人からみれば、真剣な労作である。その、ギャップが笑えてくるのである。まさか、

こういう特許を例に特許出願を鼓舞する必要は無いだろうが、こういう特許が登録されている

のだから自分の特許にも自信は持てると思えれば予想外の読書の効用といえるだろう。自

分にとっては無意識下にその効用があったようだ。振り返ってみると、ペースメーカーや温水

洗浄便座等もそれが市場に出て普及する前はだれもあてにしなかったであろう。自分の開発

した集積回路が温水洗浄便座に採用された事を知って当惑したのも事実である。まったく予

想外の用途であった。そんな縁でそのメーカーに出張する機会もあった。残念ながら、特許、

開発アイデア、失敗談等聞くゆとりが無かった。自分が現在注目するのは以下の技術(特許

検索結果):

出願番号 : 特許出願2009-56750 出願日 : 2009年3月10日
公開番号 : 特許公開2009-165481 公開日 : 2009年7月30日
出願人 : 国立大学法人京都大学 発明者 : 山中 伸弥
発明の名称 : 誘導多能性幹細胞からの体細胞の製造方法

今日の技術進歩は早い。革新的な技術が出るとその直後は競争も熾烈になるが、大きな進

歩も生まれる。半導体の世界がその例であろう。半導体の製造方法という表現は耳になじん

でいた。「体細胞の製造方法」という表現は新しい発見であった。生き物、素材等を扱う産業

が一次産業、一次産業のOUT PUTの加工(非生物)を扱うのが二次産業、役務を扱うのが

第三次産業とは何となく理解できる。当該特許技術によれば 誘導多能性幹細胞という原料

から体細胞が製造できる、その手段を特許権として主張しているのだろう。製造という概念が

生物の基礎部品である生きている細胞にまで拡大したのかも知れない。俺の臓器はMADE

IN JAPANで○○社製だと言うような時代が来るかもしれない。その頃は、もはや、一次、二

次、三次という産業分類は意味を失い、一次X二次X三次=六次産業が当たり前になってし

まうのかも知れない。

2010年1月18日 (月)

だれでも特許

2010/1/18

だれでも特許

特許が重要である事は分かっているが自分が特許出願等するとは思っていなかった。職務

発明という事で会社にあって初めて特許が出願できた。自分も特許に関する通俗書を読み、

ある程度の特許に関する知識を得た。豊沢豊雄氏の著書は一般書店で見かける機会が多

かったので読んだ記憶がある。それが数年前に詐欺か何かで問題になったと記憶している。

特許に関してはDr中松もユニークだ。こちらの方は自身が発明家であり、本名中松義郎氏で

選挙でも知名度?がある。ちなみに特許図書館で初心者検索してみた:「中松義郎」に関す

る技術が 110件 見つかりました。最新のものは公開番号 : 特許公開2009-293232 で

あり、発明家として健在のようだ。いわば、在野で特許に関して活動している豊沢、中松両氏

以上の知名度を持つ特許関係者を思い出すのが困難である。しかも人生の過半以上にわ

たり、そのような活動をしているようだ。いずれも、特許や著作権、ひいてはアイデアの重要

性とそれが権利となるという啓蒙的活動をしてきた事実は無視できないのではないか。弁護

士、弁理士、税理士、会計士、医師等法令で権利が守られている資格が多々ある。思うに、

こういう職業は結果系に網を張っており、問題が出たときお世話になるのが一般的だ。お世

話になるのは事後の課題が生じてからの場合が多い。そのような課題や問題が生じた場合

に自分の専門知識を利用して頂くような事前的活動も本来重要ではなかろうかと思う事があ

る。 一般人(顧客になる人々)にあらかじめ、その職業や自分の得意な事を知らせたら、安

心して仕事を頼めるようになるのでははいかと思うが、余りその例を見ない。広告は禁止さ

れているのか、プライドが許さないのか。ともかく、知的所有権は資源の乏しい日本にとって

はその将来を制する無形の資源である。弁理士や弁理士界がもっと特許を出せと啓蒙すれ

ば自分の仕事も増えて社会にも貢献できるだろう。その重要性を広く説く在野の人物は、そ

れに代わる専門家の活動が目立たないだけ際だって見える。自分も、部下を持つようにな

ってからは、部下に恥ずかしいと思う特許でもどんどん出せ、それを判断するのは特許庁だ

から気にするなと叱咤激励した事を思い出す。つまらない特許は埋もれてしまうが、良い特

許には他からクレームがつく。逆にクレームがつく特許が出せれば一人前であろう。技術者

として油の乗った頃、特許を出すゆとりも無かったことを残念に思った。特許の重要性を説く

上司も多くはなかった。ともかく、現場でこれは特許になるかならないかと目をこらすだけで物

の見方が大きく変わるのであり、そういう見方を身につけることにより技術者も成長するので

ある。また、特許原稿を下書きするだけで、正確な技術文書を作成する訓練になり、自分の

技術的な成果を自己評価し、記録も出来る。特許が登録されれば技術者として客観的に評

価され、歴史に名前も残す事ができる。当然、自分の特許が実施されれば、報償の対象に

なる。最近は自分の特許の使用価値を客観的に評価し、それに見合った対価を発明者に支

払うべきだと自己主張する技術者も出ている。欧米では当然の事のようだ。特許出願にも押

さえるべきつぼがある。特許の下書きも、事前に知財部門の専門家と相談するとうまくまとま

る。出願にあたっては、知財部門の専門家にお世話になった事を思い出した。開発部門か

ら管理部門に異動して開発契約等の仕事をした時にも特許の経験は役にたったと思う。

2010年1月17日 (日)

スーパーエンジニア

2010/1/17

スーパーエンジニア

日本ではエンジニアという呼び方より技術者と呼ばれる事が多いので、エンジニアにスーパ

ーという形容を付けたスーパーエンジニアという言葉は一般にはあまり聞き慣れない言葉で

あろう。本当の意味で格段に秀でた技術者をスーパーエンジニアと呼ぶ事もあるようだが、エ

ンジニアの領域外まではみ出して仕事をする技術者をスーパーエンジニアと言う事もあるよう

だ。時には、我々はスーパーエンジニアだからなーと苦笑することもあった。欧米ではエンジ

ニア地位は一般の作業者と異なり測定等の作業はエンジニアが指示するようだ。半導体生

産の初期には、需要が生産に追いつかない場合等は生産ラインで半導体の選別を工員と一

緒にした事もあった。率先垂範という意味なのか職場のトップクラスの役職者までが同じライ

ンに並んで作業をしていたのを思い出す。売れる物を売るのは当たり前。選別品を再選別し

て良品を探したり、スペックダウンして特殊規格で出荷した事もあった。特殊規格品は一般

品と区別するためパッケージ等にマーキングする場合が多い。その選別やマーキングもやっ

た記憶がある。これは、顧客のクレームで行う場合だけでなく、顧客の工程不良の対策で顧

客が頼み込んで行った場合もあった。客先ではクレームで叱られ頭をさげたら、実はこんな

不満があるからと新製品開発のアイデアを出してくれた技術者もいた。その製品を開発した

事により新しい信頼関係に発展した事もあった。そんな訳で、市場調査、企画、設計開発、

製造、販売、ユーザフォロー、クレーム処理、信頼性等色々な仕事を直接・間接的に体験し

た。技術者が営業部門でセールスエンジニアとして活躍する場合もあった。やはり、半導体と

いう得体の知れない商品を売るためには半導体事業の特質を理解していることが販売に不

可欠であったからであろう。多分、半導体関係の仕事に従事した技術者の中には幅広い仕

事を否応なく体験したエンジニアが多くいたのではないかと思う。

2010年1月16日 (土)

環境遺伝

2010/1/16

環境遺伝

甲から乙にXという何かが移る。こういう現象をこの世の中から消し去ったら、この余は空虚

なものになるであろう。生物の遺伝についてかっては謎だらけあったようだ。このXがリレー

のバトンのようなものなら何が移って行くのかはっきりする。遺伝子はそれほど単純ではな

く、今日ではDNAという物質で描かれた設計図であるということになるようだ。しかし、DNA

の配列だけではその配列がどういう性質を生物に及ぼしているか分からない。それを検証す

るには遺伝子+αが必要になる。この+αは遺伝子そのものでないので遺伝子の外部環境で

あると言える。かつてソ連のルイセンコが環境遺伝を唱えていたように思う。その学説は否

定されたようだが、環境が遺伝に与えた影響は無視できないように思える。生物の行動様式

となると更に漠然とする。ニホンザルがサツマイモを洗ってたべるという行動も個体間に伝え

られる。社会的な行動の遺伝と言えるのか。ともかく、環境の変化に耐える種の個体差があ

るのは事実であろう。植物にも劣悪な環境に耐える遺伝子があるようだ。ともかく有用植物

の稲の遺伝子は全部解読された(ヒトゲノムについで2番目)。農林水産庁によると、<我が

国が中心となり国際コンソーシアムが推進してきたイネ(品種;日本晴)の3億7千万塩基に及

ぶゲノムの塩基配列の解読作業が、2004年12月に終了した。>(今回解読したのは全ゲノ

ムの95%にあたる。)とある。興味があるのは、日本で行われて現在生産されているイネの

育種は経験的な技術で開発されたと思うが、今後遺伝子解析の成果を反映したどのような

新品種が開発されるかという事である。圃場(生育環境下)で選抜しながら開発された品種

が意外にも遺伝子工学を駆使して開発された品種に健闘できるレベルであったという可能性

もあろう。環境が遺伝子の発現を規定しているとなると環境を無視する事は出来ない

2010年1月15日 (金)

剪定

2010/1/15

剪定

2006年に果樹の勉強をした。果樹に果物が生るという事は人間に例えれば結婚して子供が

産まれるのと同じようなものである。果樹で子供が産まれるという事は熟した果実の種子が

発芽することであろう。そうすると果樹もほぼ一年がかりで子孫を残そうと活動している事に

なる。農業は数を増やす事と量を増やす事が大きな課題となるようだ。人間が無意識的に長

年かけて行ってきた作物の品種改良も最終的には増産が目的であった。桝井農場の苗のカ

タログに品種に勝る技術無しとあったような記憶がある。確かにその品種の特性を他の技術

で実現する事は非常に困難で至言であると思った。桝井氏は種苗会社経営の信条をカタロ

グの中でさらりと述べていたのかもしれない。ぼちぼち植えた幼苗も枝が混んできた株もあ

る。適度な剪定が必要だと思っているがどうすべきか迷っている。剪定以前に果樹の骨格を

作る整姿という仕事もある。こちらは幼苗の幹の途中から切らねばならない。これも思い切っ

て出来ない。放任しておくと枝は競争して伸び、勝った枝は益々伸び、負けた枝は枯れて行

く。結局枝の張り合いでエネルギーを使ってしまい、果実を作るモードに入らない。結局、自

分の育てている苗は鋸も鋏もほとんど入っていない。果樹の剪定で教えられた事は大きな枝

から切れという事であった。これは果樹全体のバランスとその果樹の数年後の状態を計算に

入れて決心して切れということであろう。未練の無くなった植木の太枝は切り落としているが、

根本から切れない樹木も多い。今後は果樹の整姿・剪定も少しずつやりたい。

2010年1月14日 (木)

記憶喪失

2010/1/14

記憶喪失

失われた時を取り戻すことは出来ない。何らかの記録が残っていればそこから過去の記憶

をわずかでも取り出す事が可能になる。情報や記録がある確率で消失するのであれば、そ

の情報や記録を保つためにはその数を増やす事が現実的な解決方法なのかも知れない。

古来の語り部はその役割を背負った人間であったろう。釈迦の教えが経典としてまとめられ

る前には多数の信徒が集まって釈迦の教えを唱和してその誤りを正して教えの変質を防い

だようである。ここに、信頼できない素材を使って信頼できる記録を残そうとする古来からの

人間の努力が認められる。デジタルの信号があるかないかで記録を操作し保存する方式、

即ちデジタル技術の本質は、はまさに信頼できない素材を使って信頼できる操作や結果を

確保する為の方法であった。自分は技術者時代の大半でアナログ技術とつき合ってきた。

そうして、電子情報通信学会を今年の3月で退会する事になっている。ほとんど読むことがな

かった学会誌を覗いたら、古いがまだ頑張っている技術が紹介されていた。まだその分野で

頑張っている技術者もいる。なつかしく感じた。やはり、生き延びる技術はそれを支える基盤

がある。それが無くなれば消えてしまうのか。一方では記録メディアの技術進歩で古いメディ

アにアクセスする手段・装置が無くなるとその記録の価値が無くなってしまう事、またその記

録にアクセス出来るようにするには膨大な量の記録をアクセス可能な媒体に変換せねばなら

ない事が今日の技術のジレンマとして紹介されていた。そんな、ことを考えながらここ1~2年

使っていないセレロン400M/HDD10Gのパソコンに残したデータにアクセスする必要が生じ

た。いざSWを入れるとWINDOWSのロゴ画面で止まってそれ以上進まない!仕方ないの

で、WIN MEの起動ディスクから作成しておいた起動CD-ROMで立ち上げたら、何とか

DOS MODEで立ち上がった。DOS MODEのSCANDISKとDEFRAGを行うと3つのクラス

ター破損が報告された。HDDに重大な支障があるという見慣れないメッセージも現れた。し

かし、何とかWINDOWSが立ち上がり、求めるデータを探したがそのデータは無かった。予

備パソコンであったので大方のデータは現用機に移してあった。現用機に残っているデータし

か無いことが確認できただけで有り難かった。ところが予備機からデータを取り込もうとして

現用機のUSBメモリーを取り外して予備機に装着した。用事の済んだUSBメモリーはズボン

のポケットに無造作に押し込んだ。いざ、現用機にそのUSBメモリーを装着しようとしたら、そ

れがポケットに無い!可動部のあるHDDよりUSBメモリーの方が信頼性があると思い自分

が作成した重要なデータはUSBメモリーにだけに保管していたのであるが、それを紛失して

記憶喪失のような空虚なやるせない心境に陥った。記憶を作る為に投入されたエネルギー

だけでも取り返せないほど膨大なである事を改めて痛感した。パソコンの記憶を失うのは、

壊れるときだけでなくその記憶パーツを紛失しても失うのだ。同時に壊れたり、同時に失った

りする確率が少ないという点では同じ物を二個以上用意した方が安全なようだ。そう言えば

特攻の兵士は飛行するとき何個かの時計を装着したという話を聞いたか読んだ記憶があ

る。昔のゼンマイ時計は止まったり遅れたりと余り信頼性が良くなかったらしい。二個の時計

が同じ時刻を指していれば問題ない。一方がD時間遅れた時は二個の平均値の遅れはD/2

時間だ。持っている時計がこの遅れる時計一個だけの場合、このDとD/2の時間が死活を決

める場合があるという事であろう。片道の燃料しか積まない特攻機の現実を思うと、やるせな

いが深刻な問題であったと理解できた。

2010年1月13日 (水)

スペクトラム拡散

2010/1/13

スペクトラム拡散

理工系の現象は数学との相性が良いようだ。数式で理論が表せる場合が多い。ある意味で

数式を理解することが理論を理解する事にも通じる。その基礎の部分に応用数学と言う教科

があった。その中にフーリエ変換というのがあった。これは情報通信理論の基礎でもあった

ようだ。今日の技術では、音も映像も時系列のデータとして扱われる。このデータをフーリエ

変換すると周波数軸上のデータとなる。こういう時間と周波数という二つの側面から一つの信

をとらえる事ができる。こういう見方をすると、音声より映像が格段に大量の情報量をもつ事

が分かる。そうして、この大量な情報を高速、確実、信頼性を保ち処理する事が技術の大き

な課題となった。アマチュア無線でも最初は電信、次ぎにAM電話、次ぎにSSBと技術が進歩

してきた。SSBの交信をAMで受信するともがもがして判読しにくくなるが、専用の受信機を

用すると正常な音声が受信出来る。ところが、軍用等の分野では交信の内容が傍受されな

いようにする必要がある。そこで登場したのがスペクトラム拡散のようだ。信号をばらばらに

刻んでノイズばかりのような広い周波数帯域の中にばらまく。普通に聞けばノイズばかりで信

号を探し事すら不可能だ。受信する時はその逆を行えば良い。スペクトラム拡という技術は

人工衛星を使った宇宙通信等でも使われたようだ。自分は実務上ほとんどスペクトラム拡散

等とは関係が無かったが、スペクトルを操作することにより新しい技術が生まれることを実感

した。インターネットもネット網を飛び交うパケットは細切れの情報になって送られる。ともか

く細切れな情報が間違いなく元の情報に確実に復元できることは凄いことではある。ところ

が、高齢になるとつくづく物探しの苦労が多くなる。特に管理分担や趣味が違う家庭では、相

手の物がガラクタに見えてしまう。そんな現場の物探しは大変だ。現実の世界をデジカメ等で

バーチャルの世界に変換してそこで物探しをして現実の捜し物の場所を発見するような技術

はあるのだろうか。自分が技術者時代に普及した計測器にスペクトルアナライザーという一

種の受信機がある。時間軸では見分けることが不可能なような極微少な周波数成分の存在

場所とその大きさも表示する測定器である。チューナで問題になり、その特性を測定するの

に苦心惨憺した、混変調、相互変調等が容易に測定できるようになったので、高周波分の技

術開発には威力を発揮できた筈である。残念ながらスペクトルアナライザーが普及する頃に

はチューナー関係の仕事から離れていた。 2002年ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏

はマススペクトル(質量分析)の研究者だと聞いて何か親近感を抱いた。横軸にあるパラメー

タ値をとり、縦軸にそれが出現する強さ、数量、確率等を取ると乱雑な事象を整理して見る

事が出来る。こういうことは、初心の技術者はいやとなくやらされた事であろう。自分も、

VHF/UHFトランジスタのPGやNFのヒストグラムを描いて歩留まりを推定した。卒研ではソニ

ー製だったか、エサキダイオードの電圧-電流特性を測定して負性抵抗を示すラクダのコブ

を再確認した。そういえば、電圧-電流特性を簡単に測定できるカーブトレーサーという測定

器も良く使ったものだ。ともかく何事も見えないものを見えるようにする事は未知の分野に踏

み込む第一歩でもある。そこに発明も発見もある。凡人にも色々なチャンスが巡ってきてい

るのかも知れない。

2010年1月12日 (火)

製図道具

2010/1/12

製図道具

物を作る技術の現場では図面が不可欠である。アイデア段階では図面は手書きで済ませる

が出来るが、図面で他者に仕事を頼む場合は綺麗で、正確な図面が必要である。大学でも

製図の教科や実習等があったが余りはっきりした記憶がない。製図板とT型定規、その他

細々とした製図用具もあった筈であるが卒業後はほとんど使っていない。自宅新築時は間取

りの図面をあれこれ描いた。大工さんは現場の仕事は、ベニヤ板に墨で書いた簡単な間取

り図一枚で済ませていた。大体個人で出来る規模の図面は頭に入れておけるのがプロの能

力のようでもあった。自分が現役時代に設計したVIF用の集積回路は300余の素子数であっ

たが、当時は回路図が大体頭に入っていた。出図の回路は手書きであった。パターン設計

CADが導入されつつあった。それ以前はパターン設計も手作業で行っていた。回路シミュレ

ーションがSPICE等で行われるようになると回路図の作成もCADに乗るようになった。手作

業による設計はそれなりのリアリティを感じたが、設計のほとんどの作業が大型コンピュータ

の上でなされるとリアリティを失ってしまったように感じた。一方、カタログ等の技術文書を作

している同僚は相変わらず手作業の仕事が多かったようだ。たまには、用事で仕事の現場

を覗いたが、ロットリングの製図ペンやステッドラーの文具を使っていた。プロが使うドイツ製

の道具である。今調べて見たらあるWEB SHOPのロットリングの解説に、「現在では、ロット

リングといえば製図ペンの代名詞といわれるほど、プロのデザイナーや設計者を中心に、高

信頼を得られている。その理由は、操作性、線の精密度、書き味といった長い歴史に培われ

た技術力にあるといえよう。」とあった。やはり、プロという自信をもって仕事をするにはそれ

にふさわしい道具を使うべきだという意識が働くのではないか。一枚のカタログも道具に負け

ないいい仕事をするぞと成された無名の作品として自己の存在を訴えているのかもしれな

い。自分は大学入学後長髪にしたと記憶している。それを契機に理容店へ行くようになった。

理容師をしている同級生に使っているカミソリはどこのものかと聞いたら、ゾーリンゲンのも

のだと教えてくれた。ゾーリンゲンと言えばドイツの有名な刃物産地であった。人口は約16万

5千人。(2003年末)との事。世界に名を売るにはそれなりの技術の蓄積と実績があるのだ

ろう。職人と道具は深い関係があるとつくづく思う。それでは、技術者は職人なのか。一人の

人間も他人による規定と自分による規定は別である。いずれにせよ、自信と誇りと責任は仕

事を持つ人が備えるべき徳性ではないか。信頼できる道具は信頼できる仕事を支える事が

出来るという話しもその道具を使って見ないと分からない。

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  • SCIENCE IS FUN in the Lab of Shakhashiri
    University of Wisconsin-Madison Chemistry Professor Bassam Z. Shakhashiri のサイト

みかん栽培関係情報

ISESAKI  有情2

ISESAKI  有情1

嗚呼 伊勢崎 非情

BOOKS

  • 橋本 英文: 刃物雑学事典 図解・刃物のすべて(1986年 株式会社 講談社 ブルーバックス B-659)
    刃物という視点で多くの事例が取り上げられている。刃のある道具の理解にも役立つ。類書が少なく貴重な一冊。「すべり変形が切断の原理」という考え方で説明している。
  • 沼田 真   : 植物たちの生( 1972年 岩波新書(青版 833))
    「ご要望にお応えしてアンコール復刊(1988年岩波新書50年記念復刊) 地球生態系の中で自然を見直す」(腰巻きのフレーズ)。植物の知恵と戦略に人類は勝てるのか。
  • 出町 誠: 14_NHK趣味の園芸:よく分かる栽培12ヶ月  カキ(NHK出版2007年)
    初心者向け柿栽培参考書(新版)。旧版と比較すると楽しい。
  • 中村三夫: 13_NHK趣味の園芸:作業12ヶ月  カキ(NHK出版1996年)
    初心者向け柿栽培参考書(旧版)。新版と比較すると楽しい。
  • 山科正平: 12_細胞を読む   電子顕微鏡で見る生命の姿
    細胞はどんな部品からできているのか。そんな疑問に答えてくれる一冊。何事も形を見るのが第一歩。μからÅオーダーの世界で、細胞をメスで解剖するように、電子顕微鏡というメスで解剖して見せてくれるので興味が尽きない。
  • 柳田充弘: 11_細胞から生命が見える
    著者の専門は分子生物学、細胞生物学。普段生物を考えても細胞レベルで止まってしまう。その細胞の中で色々な分子が働いている。細胞こそ生命の基礎だが、その細胞の中の動きを知るのに最適な一冊。疑問の発端はなぜ発根剤が効くのかということ。薬剤が細胞膜を通過して細胞内で分子と分子が作用するイメージができた。本書でできた細胞のイメージは小さな無数の穴が空いた水分が充満したヨーヨーのようなもの。そのヨーヨーの中に分子部品が詰まっている。細胞自体もタライの中のヨーヨーのように浮かんでいる。細胞図面の空白部は真空でなく水分だ。細胞の内外に水がないと細胞は生きられない。水が生命のゆりかごだ!
  • 野口悠紀雄: 10_ホームページにオフィスを作る(2001年 光文社)
    ITが輝いた時代の作品。HPの活用法は参考になる。参考:url=http://www.noguchi.co.jp/(野口悠紀雄 ONLINE)
  • 小池洋男 編著: 09_果樹の接ぎ木・さし木・とり木(農文協:2007/3/31第1刷)
    やや専門的であるが、実務専門化が分担執筆しており、その場で役に立つ一冊。
  • ノーバート・ウィーナー(鎮目恭夫訳): 08_サイバネティックスはいかにして生まれたか(みすず書房1956)
    情報と通信という現代社会に不可欠の基礎的な学問を作った著者の自伝とそれを通した科学史
  • 沼田 真(編): 07_雑草の科学(研成社1979)
    雑草を多面的に解説し防除の基礎も述べる

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MEMO 海外の博物館・美術館

  • https://www.artic.edu/collection?place_ids=Japan&page=6
  • 項目のタイトル2
    POST IT :ブログ画面への張り紙に使える。
  • TYPE LIST事始め
    2010/8/4:MEMO等の表示に使える。 農作業で気になる自戒の言葉 ■畑の石ころはいつまで経ってもても石ころ(早く拾って片づけよという意味か)。 ■同じ石を二度拾うな(やってみると難しい)。 ■手ぶらで歩くな。 ■三つ先のことを読め。 ■適当な観察。 ■空を見よ(気分転換、休憩、天気を読む、腰曲がり防止)