防空壕
2009/8/19
防空壕
竹藪の片隅に小さなくぼみがあった。あれが防空壕の跡だと教えられた。防空壕の意味を知
ってからの事で戦後十年前後の事であろう。その防空壕はすでに何十年も前に完全に消失
している。空爆を受けることが現実味を持ってから突貫工事で掘ったものかも知れない。そう
して終戦の直前にそれが現実になった。飛行機で空が暗くなった。焼夷弾が炸裂して怖かっ
た。母親が何かの折りに話した記憶が断片的に残っているだけである。自分は空襲を体験し
ていないが、爆撃機が頭上間近に飛来する夢をみて逃げる事も出来ず声も出ず金縛りの状
態になった事がある。爆撃機が爆音を立てて低空飛行するだけで大きな恐怖を受ける。その
爆撃機が数十機編隊を組んで飛来し焼夷弾を落とす。幸い、人家のまばらな農村部で空爆
の被害を免れた。母は千人針を縫ったり、兵隊さん送りに駅まで行った事等もよく話した。赤
紙で呼び出され、千人針を贈られ、万歳で送り出された兵隊さんの気持ちは察するだけでも
偲びがたい。