Zg DIAGRAPH
2009/1/30
Zg DIAGRAPH
高周波トランジスタの開発を担当していた時に使用した測定器にZg DIAGRAPHというもの
があった。Sパラメータをスミスチャート型の表示装置に光のスポットで表示する特異な測定
器で、ドイツのROHDE&SCWARZというメーカー製であった。いかにもドイツ製という風格と
光のスポットで表示するというユニークなアイデアが興味を引いた。実験室の片隅にあった。
しかし、この測定器を使いこなしていた人はほとんどいなかった。この測定器を引っぱり出し
ていろいろ挑戦したが、新米の技術者で使いこなすまでに到らなかった。結局十分に使いこ
なされることなくお蔵入りしたようだ。その測定器がなつかしく思いネットで探した。
ROHDE&SCWARZ社はローデさんとシュワルツさんという二人の科学者が設立した会社ら
しい。創業75年位たっているようだ。今日では世界でも有数の測定器メーカーになってい
る。Zg DIAGRAPHという測定器も当時は最先端の測定器であったようだ。この測定器を開
発した技術者も色々試行錯誤したのではないかと思う。しかし、世界に唯一という製品なら
ばその地位は安定するだろう。Zg DIAGRAPHに追随する日本メーカーは無かったようだ。
http://www2.rohde-schwarz.com/en/about/75_years_rohde_and_schwarz/?decade=1950
上記URLの解説によるとZg DIAGRAPHは最初にSパラメータの位相測定を可能にした測定
器であったと述べていた。テレビやラジオのアンテナや通信ケーブルの測定などにも使われ
たとある。精度の高い測定器と工作機械が工業の基盤であると言われている。確かに電気
信号の位相という概念は数式では簡単に表現できるのだがそれを超高周波で測定すること
は非常に困難であった。それを可能にしたのは技術のブレークスルーであった。高周波トラ
ンジスタの安定度の低下はデバイス内部の位相遅れに起因するのだ。今日のいつでも、どこ
でも、だれとでもという携帯電話の普及は色々な技術進歩の集大成あるとつくづく思う。