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2012年3月11日 (日)

ざっそう句(Weedy Haiku Records):津波と老学ドナルド・キーンさん(Tsunami and an old scholar Mr. Donald Keene)

2012/3/11(日)
昨日は雨。午後の後半より曇り。用事外出。ついでに書店に立ち寄る。文庫本一冊。書店の片隅で若い男性が数人の子供達に本の読み聞かせをしていた。読み聞かせと言えば、小学生の頃、担任のO先生が給食の時間に、本を読んでくれた事を思い出す。本の内容はすっかり忘れているが、読んで貰った事の有り難さを再度かみしめている。東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波と東京電力福島原発事故という同時発生した、三つの歴史的大災害・災難から、本日で1年目となる。先日、地震発生の時刻、14時46分に黙祷して下さいという回覧板がまわってきた。複雑な心境だ。外見的な黙祷が踏み絵のように形式化してしまわないか。

2012/3/10(土)の天気

TAVE= 5.2
TMAX= 7.1 最高気温(℃)   7.3  15:57
TMIN= 3.6 最低気温(℃)   3.5  02:43
DIFF= 3.5
WMAX= 2.7 最大瞬間風速(m/s)   5.0(西北西)  05:06
SUNS= 0
RAIN= 11.5

Q
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ざっそう句(Weedy Haiku Records):津波と老学ドナルド・キーンさん(Tsunami and an old scholar Mr. Donald Keene)

本日、東北地方太平洋沖地震から一年目を迎えた。その間、色々な事があった。その中で、日本文学研究者のドナルド・キーンさんが日本国籍をとり、日本に帰化するというニュースを聞いた時は、強い感動を覚えた。振り返って見ると、ドナルド・キーンさんのニュースを記事にしたのが2011年4月30日 (土)。技術 回顧と展望:東日本大震災の復興に際し、湾口防波堤はもっと強固にならないか。http://af06.kazelog.jp/itoshikimono/2011/04/。であった。あの津波が老学に与えた印象ははかりしれないだろう。心の支えを失った人々にとって、これ以上心強い支援はないだろと思った。その時作った句。

The spring dream
Of an old scholar
Flies across the Tsunami

老学の津波を渡る春の夢

The spring ocean
Shall gulp the Tsunami as well
Up to the heavens

春の海津波も飲めよ天高く

与謝野蕪村の句に、「春の海ひねもすのたりのたりかな」という句がある。ある席で、かみさんの印象を聞かれて、返答に困った。その時、何となく、こんな風かなとしゃべってしまった。春の海が凪いでいる時は、海は蕪村の句そのものかもしれない。当地は海無し県なので、海は憧れに近い存在だ。東北関東大震災の津波は、荒れ狂う海の姿をむき出しにした。そのような時に、夢や希望を与えるために、津波を乗りこえて日本に帰化する老学者に、こうごうしさを見たおもいがした。3月8日付けで日本国籍の取得が認めらたそうだ。漢字では、「鬼怒鳴門(きーん・どなるど)」という名前を使うとの事だ。名前については、その真意は何も語っていないようだが、心を鬼にして何かを叫んでいるような名前だとも思う。

でも、名前なので何か意味があるのではと、はっと考え直した。人間、自分を名乗るとき、その名前に強い決意を託すのではないか。現在、吉田松陰がなぜ松陰と名乗ったのかという点に興味を持っている。自分を名乗る事は自己のアイデンティティを規定するのではないか。

「吉田松陰;。WIKIPEDIA 吉田松陰http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E6%9D%BE%E9%99%B0。」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。(最終更新 2012年3月1日 (木) 20:54)(http://ja.wikipedia.org/)の一部引用=「吉田 松陰(よしだ しょういん)は、日本の武士(長州藩士)、思想家、教育者、兵学者、地域研究家である。一般的に明治維新の精神的指導者・理論者として知られる。、、名前 [編集]:幼時の名字は杉(本姓不明)。幼名は虎之助。吉田家に養子入り後、大次郎と改める。通称は寅次郎。諱は矩方(のりかた)。字は義卿、号は松陰の他、二十一回猛士。松陰の号は寛政の三奇人の一人で尊皇家の高山彦九郎のおくり名にちなんでつけられた。」。とある。

吉田松陰の通称は寅次郎との事だが、号を松陰と名乗ったようだ。まさに「号」とは歴史に名前を残すために名乗るのではないか。志の低い人間は号を名乗ろうとは思い付かないだろう。吉田寅次郎が松陰を名乗ることにより、新しい吉田松陰という人格が生まれ、それが理想や行動の源泉になって行ったのではないか。近代日本の夜明けである明治維新の種の一つは、吉田寅次郎が心の中に松陰を名乗る事を決意したときに蒔かれたのではないか。号は通称を超えて、更に心の広さと深さを内包するのだろう。見方を変えれば、その号から、さらに謙遜やユーモアもにじみ出てくるのではないか。

WIKIPEDIAによると、Donald(男の名前) Lawrence(男の名前) Keene(姓名)であった。「きーん・どなるど」となると、姓・名という順で、日本流の呼び方にならって順序を変えている。 辞書によると、Keeneは固有名詞で、姓名と地名の意味がある。更に同じ音の普通名詞と動詞のkeenがある。名詞:a wailing lament for the dead。動詞:to wail in lamentation for the dead。死者へ慟哭するという意味がある。

名と姓と言う順序を変えて、「きーん・どなるど」と名乗るのは、意識や気持の上で、日本人になった事を示しているのではないか。それでは、「きーん」が何故「鬼」か。先ず、ユーモアのセンスの産物ではないか。もう一つ「仕事・研究の鬼」という気持も込められているように感じる。並の人ではできないから、鬼の領域も超えられるのだろう。「きーん・どなるど」について、最初は「キーンが怒鳴るぞ」と安易な解釈をしていた。「怒鳴門」を分解すると「怒」+「鳴門」。「鳴門(全訳古語辞典)」=「狭い海峡で、潮の干満によって潮流が音を立てて鳴り響く所」。「怒」とは勢いが激しいこと。「怒鳴門」とは、海がゴウゴウと荒れ狂っている津波を連想させるのだ。それでは、なぜ「鬼」を「きーん」と読むのか。おそらく、英語の多義性と漢字の「鬼」、「き」という読み方と平仮名の表現全てで、ドナルド・キーンさんの日本に対する思いをここに圧縮・集中しているのではないか。自分の姓名は人生で最も多く使う言葉だろう。ドナルド・キーンさんはKeeneとkeenをいつも意識していたのではないか。keenとは「a wailing lament for the dead」と言うことであり、それを訳せば亡き人を哀れんで慟哭する事である。もう一つのkeenの意味は、鋭い、良く切れる、頭がよいという形容詞。こちらは、日本文学という学問の分野にはぴったりの意味があるだろう。

「鬼怒鳴門(きーん・どなるど)」という名前を聞くと、その中に何か運命のドラマが含まれているように感じた。そのドラマは、自分なりの空想だが、「日本の文学に触れ、その結果、仕事・研究の鬼のような生涯を過ごしてきたキーン姓の俺だが、そのキーンという言葉には、亡き人を哀れんで慟哭するという別の意味があることを常々頭の隅で考えていた。自分が研究で立ち向かった日本が、震災や津波でゴウゴウと音を立てて救いを求めているように感じる。今こそ、縁深い日本の亡き人を哀れんで慟哭してやる時ではないか。日本へ行き、名前を変え、日本に永住し、日本人になり、日本と悲しみを分かち合おう。」というかすかな声が聞こえてくるように感じた。ユーモラスな漢字名の中に慈悲の心をやんわりと盛り込んでいるようも感じる。新しい名前を名乗ることにより、新しい自己アイデンティティが可能になる。自分の名前を見直すことも、復興・再生に向かうためのもう一つの視点でもあるようだ。

先日聞いた講演で、気仙沼市の観音寺住職は、被災で亡くなった檀家さんの葬儀について報告した。葬儀に必要な物は流されて手に入らない。火葬もできないので土葬が行われたそうだ。祭壇も組立式の小さなものしかなかたった。戒名は葬儀の前に与えるとの事。亡くなられた方の生前の様子を、喪主や家族からよくお聞きして戒名を付けたとの事だ。そのように、有り難い戒名も過去のものではなく、喪主や家族にとって、亡き人を偲ぶとともに、未来への希望も与えてくれるのではないかと思う。

追記:「鬼怒鳴門(きーん・どなるど)」さんに関する記事があった。

YOMIURI ONLINEは、「「鬼怒鳴門」と申します、よろしくお願いします;url=http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20120308-OYT1T01125.htm(2012年3月8日22時59分  読売新聞)」というタイトルで、「日本国籍の取得が認められた日本文化研究者のドナルド・キーンさん(89)が8日、居住先の東京都北区の区役所を訪問し、記者会見を行った。 キーンさんは「日本人として犯罪を起こさないことを誓います」と会見でユーモアを交えて心境を述べた。~さらに、日本人名の「キーン ドナルド」と同時に、雅号として「鬼怒(キーン・ド)鳴門(ナルド)」を使うことを表明。鬼怒川の鬼怒と四国の鳴門から漢字をあてたと由来を説明し、会見終了後、報道陣にさっそく名刺を配った。」と報じた。

やはり、ユーモアのセンスに溢れているようだ。具体的な地名が示されているが、雅号としての「鬼怒(キーン・ド)鳴門(ナルド)」さんが発したメッセージに耳を傾けたい。

追記2(2015/7/7):ドナルド・キーーン氏の「三島への戯れ 癒えぬ痛みに(http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/shitamachi_nikki/list/CK2014040902100015.html)。」と言う記事に、同氏は「 三島はある時から手紙に「怒鳴門鬼韻(どなるどきいん)様」と当て字で書いてきた。そこで、私は仕返しに「魅死魔幽鬼夫(みしまゆきお)様」と書いた。三島は七〇年十一月二十五日に自決した。その直後、ニューヨークで翌十一月二十六日の消印が付いた三島からの航空便を受け取った。自決直前に書き、机の上に置いてあった封書を、夫人が投函(とうかん)してくれたのだ。」と書いている。この記事から同氏が、「鬼怒鳴門」を名乗るのは、きっと三島由紀夫との交友をいつまでも忘れないようにするためだろうと感じた。(この記事へのリンク

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    細胞はどんな部品からできているのか。そんな疑問に答えてくれる一冊。何事も形を見るのが第一歩。μからÅオーダーの世界で、細胞をメスで解剖するように、電子顕微鏡というメスで解剖して見せてくれるので興味が尽きない。
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    著者の専門は分子生物学、細胞生物学。普段生物を考えても細胞レベルで止まってしまう。その細胞の中で色々な分子が働いている。細胞こそ生命の基礎だが、その細胞の中の動きを知るのに最適な一冊。疑問の発端はなぜ発根剤が効くのかということ。薬剤が細胞膜を通過して細胞内で分子と分子が作用するイメージができた。本書でできた細胞のイメージは小さな無数の穴が空いた水分が充満したヨーヨーのようなもの。そのヨーヨーの中に分子部品が詰まっている。細胞自体もタライの中のヨーヨーのように浮かんでいる。細胞図面の空白部は真空でなく水分だ。細胞の内外に水がないと細胞は生きられない。水が生命のゆりかごだ!
  • 野口悠紀雄: 10_ホームページにオフィスを作る(2001年 光文社)
    ITが輝いた時代の作品。HPの活用法は参考になる。参考:url=http://www.noguchi.co.jp/(野口悠紀雄 ONLINE)
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