方丈記切読1:いとしきもの
2010/2/24
方丈記切読1
多分、高校の古文で方丈記を習ったと思う。しかし、年齢的にその内容をじっくり味わうこと
は無かったと思う。いつか読んで見たいと思っていた。随筆というジャンルだが、一気に通読
するのも大変だ。青空文庫からテキストを頂いて、気に入った部分から読んで見たい。細か
な、文庫本をよむより、カットアンドペーストでエディターに取り込んで読んだ方が楽なので、
読み方の実験でもある。随読・切り読みといえるかも知れない。適当な所から気ままに。
「すべて世のありにくきこと、わが身とすみかとの、はかなくあだなるさまかくのごとし。いはむや所により、身のほどにしたがひて、心をなやますこと、あげてかぞふべからず。もしおのづから身かずならずして、權門のかたはらに居るものは深く悦ぶことあれども、大にたのしぶにあたはず。なげきある時も聲をあげて泣くことなし。進退やすからず、たちゐにつけて恐れをのゝくさま、たとへば、雀の鷹の巣に近づけるがごとし。」
どうも、この世は昔から住み良いものではなかったようだ。身分に従い悩み事が数知れない
のは今日も変わっていない。長明さんが方丈の庵を結んだのも隠遁のためであったのか。
人界と近からず遠からずという理想的環境であったかもしれない。「深く悦ぶ」のと「大にたの
しぶ」とは別であるとの指摘は納得する。長明さんは世の中の煩わしさから身を引いて残り
少ない人生を楽しもうとしているようだ。「もしおのづから身かずならずして、」とはどういう意
味なのか。辞書によるととるに足らない人物の意味に通じる。とるに足らない人物が権威を
かさにきてはしゃいでいるのは見苦しいと確かに長明さん眼光の鋭さを感じる。思うに「進退
やすからず」という人も数知れぬのかもしれない。今も昔も変わっていない。