読みかじりの記:農薬の話 ウソホント?! あなたの理解は間違っていないか? 化学工業日報農薬取材班 編(1989年 化学工業日報社)
2012年9月11日火曜日
昨日は晴れ。雑木の歌:ネコジャラシ 自慢じゃないが 良い穂だぞ タネを数えりゃ 千五百もある。最高気温(℃) 33.1 13:57 。真夏日。灌水。朝一回では不十分のようだが。少しだけ元気を取り戻したサトイモがまた弱りだした。雑木の剪定、ツル払いと下草刈り。レモン樹に這い上がったカナムグラを退治。葉からレモンの香りがする。しっかり手入れをしないと実を付けそうにない。沼田真(編)の「雑草の科学(研成社1979)」によると、エノコログサ種子数は数百程度。畑で立派な?エノコログサを見つけたので、気休めに種子の数を推定してみた。穂の長さが15㎝ほど。目の子算で1㎝程度を切り出し、種子数を数えて15倍すると大体1500粒。前書によれば、アカザ等はその十倍以上。数える気もしない。現在、畑に生え始めている主要雑草はカヤツリグサ。除草剤を使いたいところだが手で引き抜いている。
2012年9月10日の天気(AMEDAS)
TAVE= | 27.9 | |
TMAX= | 32.5 | 最高気温(℃) 33.1 13:57 |
TMIN= | 23.7 | 最低気温(℃) 23.5 05:08 |
DIFF= | 8.8 | |
WMAX= | 2.7 | 最大瞬間風速(m/s)(風向(16方位)) 6.6(南南西) 13:37 |
SUNS= | 9.1 | |
RAIN= | 0 |
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読みかじりの記:農薬の話 ウソホント?! あなたの理解は間違っていないか? 化学工業日報農薬取材班 編(1989年 化学工業日報社)
以前、「大丸とうがん:おおまる~」という野菜を作った(冬瓜:いとしきもの:2010年9月26日 (日)。http://af06.kazelog.jp/itoshikimono/2010/09/post-6151.html。)マイナーな品種なので、身近な店には種子がない。通販で種子を買ったと思う。。野口のタネだったようだ(http://noguchiseed.com/)。久しぶりにそのサイトを訪問した。そこで、目に付いたのが以下の記事である。
以下野口のタネのHPからの引用。
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2/1付『日本農業新聞』によると、農水省は「有機野菜は有機栽培されたタネに限る」と決めたようです。もともと「有機JAS法」の規定はそうなっているのですが、「有機栽培種子」が流通していない日本では、「入手困難な場合は慣行栽培のタネでもしかたない」という便法で見逃されてきました。それが4月から法の規定を厳格に適用する結果、ほとんどの市販種子は「有機野菜のタネ」としては失格となります。(当店で販売している固定種のタネも、ほとんどが慣行栽培で採種されているので、同様に認められません)今後は「有機認証を受けた農家が自家採種したタネ」か、外国から輸入した「有機栽培種子」を使って国内外の有機認証農家が有機栽培した野菜しか「有機野菜」と表示して販売できなくなるのです。しばらくの間「有機野菜業界」は大混乱に陥るでしょう。さて「種苗業界」の動向やいかに?[2012.2.3]
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以上引用終わり。
この記事によれば、有機野菜の定義が種子まで遡る事になるので、有機のハードルが非常に高くなるのではないかと思われる。厳しい規制が消費者と生産者が納得できるように科学的・合理的に決められ、公正・公平、経済合理性の範囲で適用されれば、結構な事だろう。ところが、その規制を運用・管理する機関にお役人が天下りして、役人と業界の利益を優先する恣意的な運用がされたらどうなるか。心胆を寒からしむる事態になるように感じた。
本書は、農薬を基本的には容認する立場で書かれているように感じる。しかし、「あなたの理解は間違っていないか?」と、やや脅迫的な表現を使ってその主張に迫ろうとしているようにみえるが、、それ以上切り込めない弱みも表しているようにも見える。確かに、現時点で農薬の使用を根絶することは不可能だろう。百姓の真似事をしていると、雑草対策がいかに大変か分かる。害虫、病気対策も薬剤無しにはほとんど不可能のようだ。本書でも、本当の「有機作物」は極わずかだろうと述べている。本書は、ほぼ20年前の農薬事情を知る参考になる本ではあろう。
本書によると、殺菌剤のトプジンMは1973年に特許登録されたと紹介されている。その構造式も示されている。特許の存続期間は20年なので、すでにトプジンMの特許は終了している筈だ。商品としては、まだ店頭では健在だ。後発品があるのか興味がある。ともかく、農薬開発の事例も紹介されており参考になる。農薬だけでなく医薬も高価である。農薬の登録は対象栽培作物毎に行われる。登録対象を増やそうとするとその分試験をしてデータ余分なデータと経費が必要になると聞いたことがある。医薬も同じように見える。これは、日本だけの事情なのか。農薬も医薬も出来れば使いたくないのが人情だが、それを実現するためには、相当なパラダイムシフトが必要なようだ。農薬・医薬も日本の場合、問題が起きてから後追いで対策しているのが実状のようで、農薬・医薬への不信が行政への不信から生じている割合も大きいのではないかと思ったりする。本書からは、こういう視点は読みとれない。
先日、電車の車窓から、田畑を眺めていたら、除草剤が散布され、枯れ草が広がっている農地が結構目に付いた。日頃、除草剤の使用量が気になっていたが、農薬工業会のサイトに概略のデータがあった。そのデータを引用すると以下の通り。量は重量換算されている。
平成19農薬年度生産・出荷表(単位:トンまたはkL、百万円)
生産:トン 百万円 出荷:トン 百万円
殺虫剤 99,581 128,391 100,361 129,172
除草剤 73,883 121,330 68,787 112,265
(農薬要覧2008より)
以上のデータは生産、出荷のみのデータだが、除草剤が量・金額とも殺虫剤に迫っているのが分かる。問題は輸入量や使用量が不明なこと。耕作地で使用する薬剤が農薬で、非耕作地で使う場合は、同じ薬剤でも農薬扱いにはならないという事は、まさにダブルスタンダード、役所の論理そのままの実態が現在もまかり通っているのが実態のようだ。現実には、非耕作地用輸入除草剤が大量に使われているのではないか。
農薬工業会のホームページには、本書の現代版に相当するような記事が掲載されている(教えて!農薬Q&A。http://www.jcpa.or.jp/qa/。)。その最初の記事に「1.農薬がついた野菜などを食べると、癌(がん)になるのではないですか。」という質問があり、「食品に残留した農薬が原因でがんになるということはありません。 その安全性は現在もっとも信頼できる試験方法が組み合わされ確認されています。 がん死亡要因に関する疫学調査や疫学者に対する調査でも、農薬はがんの主たる原因とはされていません。」と回答されている。これはまさに、シカをウマと言いくるめる論法そのものの好例のように見えてしまう。目的のため手段を選ばない倫理・論理・科学的精神欠如の見本そのもののようだ。その例を原発事故の放射能汚染でいやというほど見せつけられてきたのだが。「食品に残留した農薬が原因でがんになるということはありません。」と結論していながら、「がん死亡要因に関する疫学調査や疫学者に対する調査でも、農薬はがんの主たる原因とはされていません。」と巧みにすり替えてしまっている。本書では、開発した農薬に発ガン性があり、その農薬が開発中止になった事例も紹介している。「2.農薬には、どのような種類があるのでしょうか。」農薬の種類を羅列しているが、「防除」云々ときれいな言葉しか使っていない。その生理メカニズムの説明・解説がない。農薬も放射能も、まさに生体系の要素である分子に作用してその効果を実現しているのだが、その科学的部分をブラックボックスにしている。科学の冒涜・科学的知識の独善的利用とは言えないか。
FOOCOM.NETは、「遺伝子組換え種子の特許切れ 自由利用を阻む再審査制度。http://www.foocom.net/column/shirai/7174/。(2012年7月4日)」というタイトルで、「モンサントの除草剤耐性ダイズ 2014年に特許切れ: 現在、世界でもっとも多く栽培されている組換え品種はモンサント社が開発した除草剤(グリホサート)耐性ダイズだ(商品名はラウンドアップ・レディ、系統名はMON40-3-2)。1996年から商業栽培がはじまり、現在、世界各地で毎年約6000万ヘクタール栽培される大ヒット商品となった。 このヒット商品の特許が米国では2014年に切れる。2015年から他の種子会社もグリホサート耐性ダイズを自由に販売できるし、生産者も収穫物から自家採種して翌年栽培用のタネを確保できるようになる。 ただし、これには条件がつく。開発者が特許延長を申請しないことと、新たにジェネリック種子を製造・販売するメーカーが、生産者に自家採種禁止の制限をつけないことだ。」と報じた。
日本人にとって、豆腐や納豆は日常食品の筆頭に来るのではないかと思う。その原料大豆も輸入比率が高い。「モンサント社が開発した除草剤(グリホサート)耐性ダイズだ(商品名はラウンドアップ・レディ、系統名はMON40-3-2)」を知らず知らずのうちに食べている可能性がある。安全と言えども、無条件の安全はない。医薬は、医師と患者と医薬服用に関して何らかの了解があるだろうが、農薬に関しては、無意識の内に、摂取してしまうのが実状だろう。本書が出版されてから既に、20年以上経過している。ともかく、農薬に関しては、本書出版当時から、旧態依然であまり進歩がないようだ。むしろ、見えないところで、大量に使われ、その影響もますます、見えにくくなっているようだ。今後、少子高齢化、食品の安全強化の消費者ニーズ等で農薬問題も見直しを迫られる可能性もある。農産物だけでなく、一般の工業製品も、人工的な化学材料と密接な関係を持つようになったのが現代だ。その最終製品・生産物が消費者に届くわけだが、その長い行程の中で、意識的に、無意識に、健康や安全を害する副作用、副産物が生じる。今後は、利便性の享受とリスク、コスト等をどのように負担するか等に関して国内の合意形成が必要になるだろう。これは、原発廃止論議と類似した問題になるだろうが、マクロ的な環境と考えると避けて通れないように思われる。