読みかじりの記:(高山)彦九郎 歌と生涯(12)
2010/12/28
PARTⅡ
読みかじりの記:(高山)彦九郎 歌と生涯(12)
○「尊王から倒幕への転機」の章
この章では、著者は「これについてやはり定説に近いものに尊号事件がある。」とのべて、彦九郎の転機と死の理由解明に入っているように感じる。この章には歌は無く、論述には著者の心情が溢れているように感じる。詳細は本文を参照したい。そうして著者は、「彦九郎は自らの使命も時代も終わったのだと考えたのだろう。」して、彦九郎の自刃の理由を「自らの死をもって起爆剤とすることと判じたのだろう。」と述べている。彦九郎の広い交友関係、学識、行動等があって初めてその自刃による死が、それに続こうとする人々の号砲になったと読めるのではないか。
追記:自刃は自刃した本人の全ての価値観を表す行為ともとれるであろう。高山彦九郎は切腹したが死にきれず、絶命したのは翌日であったようだ。著者の記述より凄惨な様子が目に浮かぶ。政界を引退すると公言した人がとるにたらない理由を挙げて前言を翻すような行為があたりまえになってしまった。政治家にとって政界からの引退はまさに自刃であろう。その波紋が広がり新しい波が生まれる。
著者は戦前に当時の細谷村にある彦九郎の生家を訪れ、
■ここの家に生(あ)れし正之(まさゆき)先生が国憂ひ世を嘆きとどまり難かりき
と詠んでいる。