SAWフィルター:いとしきもの
2010/3/5
SAWフィルター
テレビ放送の送受信機は一種の無線機である。自分の仕事はその受信機の極一部のIFア
ンプが中心であった。送信周波数が高いので直接高周波から信号を取り出さずに、低い周
波数に変換してから信号を取り出す。こういう方式は一般にはあまり知られていないが、アマ
チュア無線等をやると理解できる。複雑でコストが上がるが性能や操作性は向上する。現在
は受信機の技術が向上しているのコストは余り関係が無いのであろうか。かつては、回路の
コイル調整等も手作業でしていた。入社直後は、試作基盤のコイルも自分で巻いていた。
VIFアンプも数段からなるBAND PASSアンプで綺麗な波形に調整するのは大変であった。
更に、音声信号成分を減衰させるサウンドトラップというフィルターもあった。フィルター回路
の計算式が書かれた文献も先輩にもらったが難解であり、仕事はカットアンドトライという職
人的な手法しか現実的ではなかった。自分がVIF集積回路の設計を初めて二世代頃から
SAWフィルターが実用化されるようになった。これは電気信号を表面波に変換してその波の
伝わり方でフィルター作用を行うものであった。TV部門の同僚はパソコンでSAWフィルター
の設計をしていたようであった。SAWフィルターの実用化も色々な面で合理化をもたらした。
テレビ回路技術者もその部品が使いこなせれば何とか仕事は出来るようになる。ともかく、シ
ステムの合理化もその初期の頃は、部品屋が主導権を持つのかセット屋が主導権をもつの
か議論があった。しかし、大勢はセットメーカーは部品をかき集めてセットに組み立てる部分
に体力を集中したようだ。セットの特長となる部分だけはなんとか自社技術でまかなう方針で
あったようだ。今日ではSAWフィルターも到る所で使われているのではないかと思う。自分が
現役を離れる頃にはワンセグTVも話題になり、ダイレクトコンバージョンという言葉を聞い
た。技術の基本部分は余り変わらないようにも思えた。